ヨシゴイはなぜ集団で繁殖するのか
来月になるとホームグランド手賀沼流域にヨシゴイが飛来し、営巣、産卵、子育てが観察できます。単独で巣をつくるもの、集団で巣をかまえるものが存在します。その背景にあるものについて文献の記載されている内容を紹介します。上田(1996)は、ヨシゴイの繁殖期に巣場所や生息地の状況、捕食率などについて調査を行なった結果を報告しています。年により違いはあるものの単独巣は集団巣よりも高い割合で捕食にあい、巣の下の水深が深い場所の方がアオダイショウやイタチによる捕食にあう割合は低く、水深が浅い場所では捕食にあう割合が高い結果であり、水深は繁殖の成功を左右する重要な要因と判明したと述べています。しかし、ヨシゴイで単独営巣する個体が存在していることを指摘しています。葦の単独巣は捕食にはあいやすいが、葦の高いところにつくられた巣は高さが高いために、繁殖時期である梅雨後期の大雨や台風時の増水によって冠水しない利点があること、好適な営巣場所があっても遅く集団繁殖地に加わる場合には、集団繁殖地の周囲はかえって捕食者に襲われやすくなるといった背景があることが単独営巣する個体の存在する背景にあると指摘しています。(引用)上田恵介.1996.ヨシゴイはなぜ集団で繁殖するのか:巣場所選びと繁殖成功.STRIX Vol. 14, pp. 55-63.(写真)2022年8月26日柏市、2013年7月13日埼玉県越谷市で撮影