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カテゴリ:本
天と地の守り人 第三部 (偕成社ワンダーランド34) 上橋菜穂子作 二木真希子絵(2007年3月初版第一刷 偕成社)
北の大陸の聖なる地に焦がれ、侵攻する南のタルシュ帝国。 タルシュ帝国を一代で築き上げた皇帝オーラハンは死の淵。 次の皇帝はラウル王子か?ハザール王子か?その決定権を太陽宰相アイオルに委ね、深い眠りに落ちた。 揺るぎないかのように見える帝国。その底には枝国の国民の不満が蠢く。 アイオルは枝国出身の宰相。 枝国出身の南翼宰相ハミルは枝国出身者でなければ見えないものが見える自分が仕えているからこそハザール王子に有利になったとある策の実行を進言。 一方、ラウル王子はアイオルと同じコーラナム枝国出身の官僚オイラムを帝国を害する陰謀を企てていたという帝国を害する陰謀を企てていたという罪状で投獄。 首謀者ではなくむしろ不満を募らせ過激な動きを望む者たちを押さえる要であったオイラム。 ラウル王子の鷹であるヒュウゴは早まったことをしたと諌めますが、逆に主にそのような不穏な動きがあったことを知らせなかったことから職務怠慢と投獄される。 「あなたの領土の土台に異変の兆しがみえたとき、思い出してください。私の言葉を。―わたしは、その異変をとめてみせます」 こっそり、ヒュウゴを助けにきた呪術師ソドク。 拷問にかけられるのだぞと説得するソドク、が、枝国の不満が噴き出した時に自分はここにいなければならないここを出るわけにはいかないとウラス<魂消し>の丸薬を出し、覚悟を見せるヒュウゴ。 帝都に戻るまでに受け取った三つの鷹便。 一つ目は次代皇帝の決定権をアイオルに委ねられたこと。 二つ目はハザール王子側に忍ばせていた密偵から知らされてきたハミルの策略。 三つ目はバルサにチャグム皇子渡してくれと託した種の芽生え。 この三つを手に入れ賭けをすることに決めたヒュウゴ。 ソドクはヒュウゴの魂を拾うことを約し去る。 青霧山脈に抱かれた山深い里、タンダの家についたバルサは人の気配がないことを感じタンダの家族が住む村まで下りた。 渓流の斜面には土嚢が積まれナユグの春つまり大洪水への備えがされている。 一刻も早くカンバル王国の牧童らが告げた災厄を告げ避難させるべく国境を越えてきたバルサは少しだけ焦りの気持が落ち着くがタンダの両親に会うとまた不安が這い上がってきた。 バルサを見て顔をこわらばせる老夫婦。タンダがどこに行ったか尋ねるバルサ。 そこに現れるトロガイ。お前が村に顔を出すと皆困るだろうから・・・とトロガイ。老人たちから見えないあたりまでバルサを引っ張って、足を止める。 今までどこに行っていたのか尋ねるトロガイにチャグムと一緒にロタとカンバルを回ってきたとバルサ。ユサ山脈の山の底でチャグムが見たこと、牧童たちが告げた災厄について話す。 土留めや溝掘りなど洪水に備えはしたがそれでも氾濫したら危険な地域に住む者たちを一斉に避難させるためにショ・ヤイ<光の鳥>を飛ばすとトロガイ。 問題は光扇京に住む者。シュガにお告げとして帝にしらせようと考えるトロガイだが肝心のシュガがなんでも屋に降りてこない。 チャグムが援軍を連れ帰還したら状況が変わるのではと考えているバルサですがそれはチャグムと父の帝とで争うことをも意味している。 タンダの行き先を訪ねるバルサ。草兵として徴兵されたタンダ、末の弟の代わりに・・・ 今はタラノ平野・新ヨゴ皇国の南部、サンガル王国との国境付近にいる。 「緒戦のために配備された部隊は牙と呼ばれる精鋭部隊。戦をしたことのない新ヨゴ皇国の兵士たちは惨殺されるだろう。むごさを帝に見せつける戦だから・・・」 ヒュウゴの言葉を思い出すバルサ。新ヨゴ皇国が与えられた返答期限はあと五日! タンダに迫る危機!タンダのもとに急ぎ向かうバルサ。 所々封鎖されている道、砦を避け進むうちにいつしか四路街の近くにつくバルサ。 街道沿いのそれに比べ粗雑な砦。タルシュが攻めるならさしずめこんな張りぼてを選ぶだろうと思うバルサ。 砦を避け四路街につくバルサを迎えたのは大門と用心棒仲間たち。ここは砦と敵に挟まれた街。 何時タルシュが攻めてくるか、敵の拠点にさせないため皇国軍に火をつけられるか。町役に雇われた用心棒たち。 ようやく現在の新ヨゴ事情を理解するバルサ。 そこへ陣中見舞いの酒を持って現れたトウノ。アスラとチキサが世話になっている商店店主。 タンダさんを心配なさっているんですね・・・とトウノ。 緒戦がどうなったか?トウノが伝え聞くところによると・・・ 今はアスラ達のことを考えるとバルサ。皇国軍の斥候が南から砦に向かって街の大門を駆け抜けていった。 タルシュ軍が攻めてくる。街を、人を守るにはどうしたら? 万の兵を持っても攻め落とされた皇国軍。 十数人の護衛士と街の備え程度では守ることは不可能。バルサが考える手は? そしてロタとカンバルの援軍を引き連れたチャグムもまた新ヨゴ皇国に。 今まさに新ヨゴ皇国が直面するタルシュ帝国の脅威とナユグの春の災厄。 バルサはタンダと再会できるのか? そしてチャグムは新ヨゴ皇国を救うことができるのか? ---------------------------------------------------------------- とうとう読んでしまいました。これで終わりなんですねえ。 バルサとタンダ。 タンダ、あんなことになってしまうとは!作者の上橋さんは容赦がないなあと思いました。 バルサの選択は適切だったと思いますがとても真似できません。 深い愛情あってのことだと(そして技術と度胸か?)思いました。 バルサは今回も強くてかっこよかった。そして今までで一番可愛かった。 それにしてもバルサ達はチャグムと再会することはないのですね。 帝。 帝はあくまで帝として生きるしかなかったようです。穢れを嫌う清いもの。決して誤らないもの。 チャグムはたとえ自分の手を穢しても民を救い生かし続ける道を選択します。 父を手にかけるという事態も想定しながら・・・ 実際には自ら手にかけはしませんでしたが、父の選択の結果はわかっていたのですよね。 また帝がガカイら一握りの者を残し、宮から追い出してしまったのは帝なりに最良の策を選んだのでしょうね。 シュガ。 チャグム亡き今、自分が手を下してもこの国の存続を・・・たとえ枝国になったとしても・・・と決意していたシュガですが早まらなくてよかったというかチャグムが間に合ってよかったです。 トロガイが送った大災厄を知らせる夢。 ナナイの残した課題。天をみつづけよ!の真の意味。 解き明かしてもチャグムが帰還しなかったら急場しのぎにしかならなかったでしょうから。 これからもチャグムを支えてやってくださいね!これからが大変でしょうから・・・ トロガイ師。 かっこいいです!さすが当代一の呪術師です。女性であることもたくましさの理由かもと思ったりして。 金の糸を飛ばし金の鳥となって飛んで行くところはすさまじいです! でもあまり見たいとは思いませんが・・・ チャグム。 自らの手を穢し、敵や味方の屍を踏み越え帰還したチャグム。 一番つきたくなかった席につくことになってしまうチャグム。 悲しみや苦しみと共に国を背負って行くだろうチャグム。民の幸せのために進んでいくのでしょう。 深い疲れと心労に倒れ、眠るチャグムが見たナユグ。すべては最初の物語(精霊の守り人)に続くのですね。 そして、妹と弟を伴って降りる花畑の場面が微笑ましかったです。 ヒュウゴ。 粘り強いというか我慢強いというかこの人のお陰でいろいろなことが動いたんですよね。 ラウル王子によく付いてきたなあと思うけれど、焦らず、恐れず。 登場した時は怪しい人(それでも憎めないというかなんというか)だと思ったけど中々すごい人だったのね。ラウルもこういうちゃんと見て進言してくれる人がいれば道を外れることなく王としてやって行けそうです。 トーヤとサヤも少しだけ登場。この二人もたくましく生きてますよ。 ----------------------------------------------------------------- ユリイカ 6月号「特集 上橋菜穂子 <守り人> がひらく世界」(2007年6月1日発行 青土社) 書き下ろし短編「ラフラ(賭事師)」<守り人シリーズ外伝>感想 短編なので感想だけ。 十三歳のバルサです。この頃から鍛えられていて強かったのね! 手先が器用で度胸もあって、でも若い!若いわ! ジグロ、なかなか厳しいというか経験重視、痛い目を見て知れという感じがすごい。 そして何よりラフラのアズノ。老女なんですけどカッコイイ! 負けない狡猾なススットも良いんだけど、ロトイ・ススットをやっているところがカッコいい。でも最後は少し寂しかったです。 こうした場面のすべてがバルサの血や肉になっていったんだなあとも思いました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007年06月21日 13時04分26秒
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