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弁護士・伊藤和子のダイアリー

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2008.04.30
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 私は大変驚愕した。
 渋谷のDV殺人事件で、精神鑑定の結論をまったく無視して完全責任能力に基づいて
 有罪・懲役15年という判決が出たことである。
  検察・弁護双方の鑑定人が、事件当時被告人は心神喪失状態だった、との結論を出し、
 法廷でも尋問が行われた。これと反する追加の立証- 鑑定はない。
  にも関わらず、裁判所は、その後の審理も尽くすことなく、鑑定結果を覆して
 完全責任能力を認めたわけである。
  これでは、証拠に基づく当事者の立証の意義はどこにあるのか、科学鑑定の意義はどこにあるのか、刑事裁判の大原則をこのように崩してしまうことに大きな危機感を感じた。
 何より、「疑わしきは被告人の利益に」の原則を完全に無視している、というほかない。
 本件はDV被害を受けた被告人が夫を殺害した事件である。DV被害が被告の心身にいかなる影響を及ぼしたのか、丁寧な立証と事実認定がなされなければならなかった。
 科学鑑定を覆すのであれば、さらなる立証と審理が尽くされるべきであったはずだ。
 あまりにも乱暴な判決で、このようなことが前例になってはならない。
 今後、裁判員制度のもとで、迅速化だけが重視され、このような、立証を尽くさせないままでの有罪判決が相次ぐことが危惧される。しかし、このようなことが前例になれば、当事者主義に基づく、無罪推定を旨とする、刑事裁判の意味はなし崩しになくなってしまうであろう。


http://mainichi.jp/select/today/news/20080428k0000e040013000c.html
夫殺害切断:三橋歌織被告に懲役15年の判決 東京地裁

入廷する三橋歌織被告=イラスト・大須賀友一

三橋歌織被告 東京都渋谷区の会社員、三橋(みはし)祐輔さん(当時30歳)を殺害し切断した遺体を捨てたとして、殺人や死体損壊などの罪に問われた妻歌織被告(33)に対し、東京地裁は28日、「あまりに残酷で無残な犯行」として懲役15年(求刑・懲役20年)を言い渡した。公判では鑑定医2人がともに「事件当時は心神喪失状態だった」と報告していたが、判決は歌織被告の完全責任能力を認めた。

 河本雅也裁判長は、事件当時の歌織被告の精神状態について「意識障害を伴うもうろう状態や幻視、幻聴状態に陥り、適切な行動の抑制が困難な状態にあった」と、鑑定の信用性を認めた。その一方で(1)頭部を集中して攻撃するなど一定の運動能力があった(2)自らの行動や被害者の反応なども記憶し、意識の清明さを保っていた--などの理由から「精神の障害は責任能力に問題を生じさせる程度ではなかった」と結論付けた。

 そのうえで「生存を装うメールを送るなどの隠ぺい行為を繰り返し、遺族の気持ちを踏みにじった」と非難。しかし「夫から暴行を受け続けながら、夫は離婚の求めにも応じず、精神的にも追いつめられ、地獄のような夫婦生活を送っていた。同情の余地が相当ある」と述べた。

 判決によると、歌織被告は「夫から逃れたい。この生活を終わらせたい」などと考え、とっさに殺意を抱き、06年12月、自宅マンションで寝ていた祐輔さんの頭をワインボトルで殴って殺害。遺体をのこぎりで切断して、東京都新宿区の路上などに捨てた。【伊藤一郎】


 
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080426-00000068-mai-soci

東京都渋谷区で06年、夫を殺害し遺体をバラバラに切断したとして殺人や死体損壊などの罪に問われた三橋(みはし)歌織被告(33)に対する判決が28日、東京地裁(河本雅也裁判長)で言い渡される。「殺害時は心神喪失だった」との精神鑑定結果が出ており、裁判所が被告の責任能力をどう判断するかが焦点だ。【銭場裕司、伊藤一郎】

【関連特集】 渋谷夫殺害切断

 法廷で2人の鑑定医はともに「急性の精神障害で、刑事責任を問えない心神喪失状態だった」と報告した。ただ1人はその後意見を修正し死体損壊や遺棄の場面で「人に見つかれば怒られることを分かっていた」と一定の責任能力を認めた。

 心神喪失の根拠とされた幻覚体験を鑑定医だけに語った理由について、歌織被告は「変なやつと思われたくなくて弁護士にも話していなかった」と説明。弁護側も「事件当日は幻覚や意識混濁が起き、現実感を失った状態だった」と心神喪失を主張する。

 一方、検察側は「それまで誰にもしていない話を急にしていて信用できない」と主張。夫の生存を偽装するメールを送るなどの工作をしていたことから責任能力はあったとして懲役20年を求刑した。

 歌織被告は最初の被告人質問で、殺害時の状況を「起きあがってきた夫を殴った」と話した。だが4回目の質問では「起きあがってきた後に覚えているのは倒れている後ろ姿」と供述内容を変え「殴った記憶」を否定した。

 裁判所が、この供述の変化をどう評価するかも、責任能力の判断に影響を与えそうだ。判決が心神喪失と認めれば無罪となり、心神耗弱と判断すれば刑が減軽される。

 元東京高裁部総括判事の村上光鵄(こうし)弁護士は「責任能力は鑑定結果に殺害方法といった客観的事実などを加味して、裁判官が決める。鑑定内容に拘束はされないが、専門家の意見を排斥するには説得力がある説明が必要になる」と指摘する。

 最高裁は25日、公正さに疑いがあるなどの事情がない限り鑑定結果を尊重すべきだとする初判断を示しており、この基準が影響を与える可能性もある。

 ◇鑑定医2人並べ同時に尋問

 公判は、09年5月に始まる裁判員制度の下での精神鑑定の在り方にも、さまざまな課題を投げかけた。

 3月10日の法廷。2人の鑑定医が並んで裁判官らの質問に答える異例のスタイルがとられた。短期間に集中的な審理が行われる裁判員制度を意識した試みだった。ベテラン裁判官は「疑問点や対立点をその場で質問できるメリットがある」と解説する。

 課題は、裁判員に鑑定内容を正確に伝えられるかだ。鑑定医2人は、鑑定結果を口頭で説明した。裁判員は、難解な専門用語で書かれた鑑定書を読む余裕はなく、報告は簡潔にせざるを得ない。ただ東京地検幹部は「口頭だと内容が分かりづらく質問もしにくい。結果を簡略にまとめた書面があった方がいい」と指摘する。

 一方、国立精神・神経センターの岡田幸之(たかゆき)精神鑑定研究室長は「そもそも鑑定医の人数が少なく、制度に対応できる人員や人材が足りるかが課題になる。法廷で取り扱われる鑑定は微妙な案件が多いので、簡略化した報告をまとめるには従来より手間がかかる」と指摘している。

 





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Last updated  2008.04.30 22:36:04
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