弁護士・伊藤和子のダイアリー

　　今日は、洞爺湖サミット会場の近くにある、国際メディアセンターに入った。
　　不思議なところだ。
　　まず、札幌からサミット会場に近付くルスツ・リゾートにいくバスはがらがら、
　　というほどでもないがさして混んでいない。会場周辺にサミットに反対するらしき
　　騒がしきＮＧＯ・市民の人々の動きはない。道路も閑散としている。
　　それでも、ルスツの近くになると、機動隊の人々がおり、検問などをしており、
　　バスには二人も警官が乗り込んで何やら乗客に関するメモをとる（一人は道警、
　　一人はなぜか千葉県警）。
　　ルスツ・リゾートにつくやいなや、
　　「ＩＤをみせてください」と言われてどっきりである。
　　　サミット会場が人を寄せ付けない雰囲気をかもしだしているようだ。
　　　ところが、メディアとＮＧＯを収容する国際メディアセンターにつくやいなや、
　　そこは祭りのようである。メディアのお祭りみたいな雰囲気で、
　　メディアの人の人数が異常に多い。「こんなに外信記者っていたかしら？」と疑問に
　　思うほど、報道関係者の人数がふくれあがっている。
　　　なぜこんなに記者の人たちがＧ８サミットに集結したのか、それほど世界にとって
　　重要なことが決まるのか、不思議な感じがする。
　　　
　　　一方、ＮＧＯについては以前はメディアセンターに入れなかったが、最近になって
　　メディア・センターに入って活動ができるようになったという。
　　　しかし、膨大な人数のメディアとは対照的に国際メディアセンターに出入りが
　　できるＮＧＯの人数はきわめて限定されている。本当に少ない。
　　　事前に申請して、申請が認められた場合だけ、入れる、という仕組みなのだ。
　　　報道とＮＧＯの格差があるのを感じてしまう。

　　　　しかし、このメディア・センターに入れると、無線ランのアクセスがあるワーキン　　　　グ・スペースが提供されるだけでなく、コピーも印刷も無料、コーヒーも無料、
　　　無料シャトル・バスの利用が可能、さらにホテル内のレストランで無料で食事
　　　ができる、という厚遇である。レストランはどこも北海道の食の贅をつくした、
　　　というような美食が並ぶ。
　　　　チーズ食べ放題のコーナーもある。

　　　　こういう特別待遇はいったいどうしたことだろうか。
　　　　一方で、韓国のＮＧＯの人たちは入国を拒否されて帰国したりしている。
　　　　昨日は札幌で逮捕された人たちもいる。
　　　　市民社会がメディア・センターにアクセスすることが可能になった一方、
　　　　市民社会に格差を持ち込んで、コントロールしようというようなことが
　　　　悪意なく行われているのではないだろうか。
　　　　このようにして御用ＮＧＯというのが作られてしまうのではないか。
　　　　　というわけで、この環境になかなかなじめない。
　　　　　しかも、これだけサミット会場の近くにいるのだが、
　　　　サミット会議場には絶対に近づけずに、みんなテレビをみているだけなのだが。

　　　　　しかし、メディアの方々はこういう雰囲気になれているのか、
　　　　知り合いの記者の方々におあいすると、極めて意気軒昂、各ブースにも
　　　　殺気立った様相が立ち込め、着々と戦闘態勢を整えている雰囲気である。

　　　　　そんな違和感を覚えながらも、
　　　　今日はサミットでアジェンダに入ることが予想される人権問題について
　　　　プレスリリースをあちこちに配布し、仕事が一段落した。
　　　　　明日からは、札幌コンベンション・センターで、市民サミットに参加するので、
　　　　早朝にニセコから札幌へ出発する。国際メディア・センターには、
　　　　８日に戻ってきてプレス・ブリーフを行う予定である。
　　　
　　　　　しかし、この驚くべき格差と驚くべき整備と、それらすべての不思議な
　　　　事々が税金で賄われていること、これは市民が知っておくべきことだと
　　　　思う。Ｇ８諸国が行っている不正義・不公平に比べれば、小さい話かもしれないが、
　　　　Ｇ８の金持ちクラブが人々から収奪していることの小さな縮図を
　　　　みた思いがした。