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弁護士・伊藤和子のダイアリー

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2008.07.31
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  裁判員制度は第二の後期高齢者? というほど国民的理解が進んでいないという。
  アメリカの陪審制をみてきた私は、日本の市民が「裁判に参加したくない」というのに
 最初、すこしがっかりしていたが、いろいろと理由をきいてみると、みなさんが
 躊躇する気がわかる気がしてきた。

  たとえば某TVメディアでバリバリ活躍するジャーナリストの女性とふと
 裁判員制度の話になったら「裁判員には絶対なりたくないです」というので驚いた。
  「なんで?いつだって番組で社会を斬っているじゃないの!」ときくと、
  「だってひとりの人の人生を決めるような判断はできません」というのだ。
   とくに、量刑の判断をしなければならない、死刑か無期か判断しなければ
 ならない、というのが大変重いという。
 有罪か無罪か、だったら証拠に基づいてできるかもしれないが、
 刑を決めるような裁きはできないというのだ。
  これを聞いて私はかなり納得してしまった。

  また、この間、裁判員制度に関する、あるご意見ファックスをみる機会があったが、
 手書きで丁寧に書かれたファックスには疑問が充満していた。
  さまざまな懸念を表明する何通もの意見に共通しているのは、
 「裁判員制度では、3,4日間で判断するといわれている。そんな短期間で、どうして
 死刑や無期、無罪といった重要なことを決められるのでしょうか」「そんな恐ろしい
 ことに関与できません。もし誤った判断に加担したとしたら、と思うと、大変
 恐ろしい」という。とても真摯なご心配に、正直感銘を受けた。
  市民のみなさんは、もし人の生き死ににかかわる判断に参加するなら、
 きちんとやりたい、じっくり考えてきめたい、即席の判断なんかしたくない、
 とおっしゃっているのだと思う。とても真面目な、誠実なお考えだと思う。

  誰が「裁判員裁判は三日で終わる」と言い出したのか知らないが、
  米国では殺人事件で真剣に争う事件で三日で終わる例などほとんどない。
  米国で殺人事件は負ければ死刑になるリスクが大きいので有罪取引をして
  終わるケースが多く、あまり陪審にならないのだ。陪審になるのは
  性的暴行とか、強盗とか、人の死なないケースが多いが、それでも
  一週間はかかりますね、だいたい。
  陪審になる殺人事件は、真剣に争う場合数週間~数か月かかる。
 
  だから、日本の裁判所がいったい何を根拠に「三日でおわる」と言っているのか、
 さっぱりわからない。
  裁判所は、審理期間を異常に短縮しよう、としているが、あちこちにすごく無理が出てし まい、刑事司法をゆがめることになるだろう。とくに弁護士としてはたまらない話だが、
 そう思うのは弁護士だけではない、ということなのだ。
  そんなことにつきあわされるのはたまらない、と、まっとうな日本人の方々は考えて
いらっしゃるのだろう。
  それが「素人が参加するのだから三日が限度」「審理を簡略化しないと素人には
わからない」などと考えるのは、かえって国民- まじめで誠実な日本の市民の方々-
をばかにしているのではないだろうか。

  さらにいえば、

 冤罪がこれだけ問題になっているというのに、警察・検察は取調べの全過程を
 録画しようともしない。
  
  裁判員には評議の内容について守秘義務が課され、破れば罰則を科される。これもアメリ  カではありえないルールだ。

裁判員制度から量刑判断をなくし、守秘義務をやめる。
 取調べの全面可視化をする、そして審理については市民が納得して判断できるだけの
 十分な審理期間を保障する、ということが最低限実現しないと、
 不安は募るばかりではないだろうか。

  何が市民を不安にさせているのか、を、よくよく聞いて、今からでも
 制度を考え直したほうがよい。運用で変えられるところも多い(審理期間とかね)。
  その理由は表面にあらわれていたり、法律家が想像しているものよりも
 もっとまっとうで真摯なところにあるのではないだろうか。

  表面的&感覚的なキャンペーンをやればみんなが裁判員に参加したくなる、というほど
 日本の国民は甘くないのは、と私は思う。





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Last updated  2008.08.01 01:52:35
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