カテゴリ:女性の法律問題
朝日新聞ほかあちこちに、 「インドで代理出産の赤ちゃん、夫婦離婚し帰国困難に」 という記事がでている。 実は、この件で赤ちゃんがどうにもならない状態に置かれてしまい、 インドの知り合いの法律家の方々がこの件で大変困って連絡をしてこられたので、 インターンさんに手伝ってもらい、 日本の民法や判例などの情報をお教えしているところである。 日本では代理母問題の場合、代理母が法律上の母になることになり、 代理母を依頼した卵子の提供者は母ではない。 そのことは、最高裁でも去年確認されて、海外で、卵子提供者を母と認める 判決が出てもその効力は日本では認められない、ということになった。 (2007年最高裁判例) しかし、あくまでそういうやり方を貫くとあらゆるところで矛盾が生じてしまい、 民法・親族法の条文を適用していくと、大変不合理な結果に終わってしまう、ということ が多いことがいまさらながら、よーくわかった。 民法の規定は、本来代理母を母とすることをまったく想定していないわけで、代理母がさまざまなところで母として登場すると、法律関係が非常にねじれたものになる。 とくに海外の代理母の方は、子どもに執着がないのが普通であり、いろんな局面で母として役割を果たすことなど、まつたく想定していないだろうから。 ひとたび代理母から生まれてしまった子どもの福祉を考えると、 代理母でなく卵子提供者に親としての権利と責任を明確にさせることが、 日本でも不可欠なのではないだろうか。 しかし、この個別ケースについてコメントするつもりはないが、 私たちの国の人々が経済的に貧しい女性を代理母にさせている、という状況は とくにインドのような国で貧しい女性を利用して、対価を払って そういうことをさせてる、という状況は、 かたちを変えた先進国から途上国への搾取のように思えて、それ自体は とてもいたたまれない。複雑な心境になっている。 記事は、 http://www.asahi.com/national/update/0807/TKY200808070382.html より。 日本人夫婦が、代理出産が認められているインドで、契約を結んだインド人代理母から女の赤ちゃんを得たが、帰国が難しくなっていることが7日わかった。出産前に夫婦が離婚をしており、赤ちゃんがパスポートの取得ができずにいるためだ。このトラブルを現地や海外のメディアが報じている。 代理出産については、日本学術会議が、日本人夫婦による海外での代理出産には子どもの福祉からも、代理母の福祉からも問題があると指摘。今年4月に国内での実施も含め、代理出産の原則禁止をうたった報告書をまとめている。 現在、赤ちゃんがいる西部ジャイプールの病院などによると、愛媛県の40代の男性医師と妻はインド人女性と代理出産契約を結び、インドの不妊治療クリニックから第三者の卵子提供を受けて7月25日に女児が生まれた。夫婦は子どもが誕生する前の6月に離婚しており、元妻は女児の引き取りを拒否しているという。 男性医師は赤ちゃんを引き取る意向で、女児はインドのパスポートを取得する方向で検討を始めた。女児は、男性の母親が現地で世話をしているという。 男性医師によると、すでに代理母を母とする出生届をもらっている。日本大使館からインドでの養子縁組を求められたが、養子縁組を求める自分の名が出生届の父親欄にあるため、養子縁組は難しいと現地で言われたという。 さらに、養子縁組については、インドでは独身男性は女子を養子にむかえられないという。ただ、病院側は「生物学的な父親なので、本来は養子縁組をする必要はない。インドで生まれたので、市民権を得て、インドのパスポートを取れるはず」と話す。 インドでは04年に代理出産が認められ、海外からの依頼が急増していると言われる。代理母には多額の報酬が支払われる。経済的理由で貧しい女性が引き受ける場合が多いなどと問題視する声もある。 女児の場合、かりにインドの市民権、パスポートを得て出国できても、すぐに日本国籍が得られるわけではない。インド人の代理母を母とする出生届を日本で出すだけでなく、父親が認知のための裁判手続きもする必要があるとみられる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.08.08 20:08:13
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