意志ある学び
いよいよ大学生活が始まるいしがみんから質問された。「大学生活で後悔していること」僕に後悔があるとすれば、自分の意志で学んでこなかったことだ。大学生のくせに、「与えられた学び」の中で生きていた。大学になったら、たくさんの講座の中から授業を選んでいけるのかと思っていたら、理工学部物理学科の時間割は全部決まっていた。わけのわからない授業に忠実に出席だけはしていた。自分の意志で学んだのは、4年生の卒業研究だけだった。僕の場合、物理学科を選んだのは物理の勉強をしたかったのではなく、核融合の勉強をしてみたかったのだ。だから、いよいよ卒業研究で核融合の研究室に入った時はうれしかった。そして、一生懸命実験をし、データをコンピュータで解析するプログラムを作った。このとき生まれて初めて、自分の意志で、自分の力で勉強というものをしたと思う。面白くなって、もっとやりたいと思ったとき、あまりにも1~3年生の時の勉強をおろそかにしていたために研究者としての基礎学力がないことが悔しかった。それでも僕ら4年生4人のチームで研究したデータは貴重なものだったらしい。かなり分厚い報告書になった。僕らの卒業後、先生がプリンストン大学でその成果を発表してくれたそうだ。これから大学で、いやいや高校で、中学で学ぶみなさんに対して思うのは「与えられた学び」から「意志ある学び」へ転換することの大切さだ。