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カテゴリ:高論歩事件帳
でくは閉鎖した鶏卵場から退職金の、10万円を貰って、寮を追い出された。東京にいってみようと、新宿行きの電車に乗った。電車に乗るのは、五回目だったかもしれない。 暫く、新宿の公園で寝泊まりしたが、そこには古株のホームレスがいて、縄張りもり、いい場所で寝ることができなかった。残飯漁りのハンバーガー屋や、飲食店にも先輩浮浪者がいて、そこにも、縄張りがあり、新米ホームレスの残飯漁りは厳しかった。 でくは、どうして自分ばっかり不幸なんだろうか、とは思ってはいない。 「人間みな、同じ様なものだよ」と、中学の先生が言ってたことを思い出す。辛いから、死にたいなどと思ったこともなかった。自殺するなんてのは、頭のいい人がすることだと、思っていた。 新宿を離れて、山谷で三日寝て、池袋では一日だけ寝て、川崎で寝ていたら、この川を上っていけばいいところがあるよ、と、ホームレスの爺さんに言われて、多摩川沿いで五泊して、流れ流れて、たどり着いたのが、この、リバリーヒルズの近くの橋の下だった。 三日前まで、この場所で寝泊まりしていた、ホームレスが警察に突然しょっ引かれたて、空き家になっていたのだ。ビニールも、段ボールも枕代わりのマンガ本も、鍋もあった。 肌はかさぶたのように垢と汚れで、かさぶたのようになっているので、蚊取り線香はいらない。蚊も不味い血は吸わない。蚊や虫も美味い血は高級住宅街にあることを知っている。 月曜日と木曜日の生ごみの日にリバリーヒルズのゴミ箱の隅で、餌を漁った。リバリーヒルズのゴミ箱にはご馳走があったし、塵の中には、でくにとっては宝物も沢山あった。酒は居酒屋の裏で、ビンの底の残り物を飲んだ。 でくは、ここに流れ着いてほっとしていた。 (つづく) 作:朽木一空 ※下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。 またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2014.06.01 10:32:08
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