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2015.10.18
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カテゴリ:江戸珍臭奇譚 
DSC01211.JPG

糞詰まり解消したの巻

 御赦免船は三宅島でさらに二人の罪人を乗せ、十日かかって、江戸の霊岸島の御船手番所に着いた。地虫の熊五郎は大きな体を船酔いでふらつかせながら船を降り、江戸の空気を胸いっぱいに吸った。出迎えが来ているのは、蘭学者の女房だろうか、僧侶にも頭の青い若い坊主が出迎えに来ていた。
 三宅島から乗った二人には出迎えもなく、そそくさと葦の茂る中をを歩ていった。地虫の熊五郎を出迎えたのは、囲碁狂いの見回り同心、真壁兵四郎だった。
「ちょいと、熊五郎、顔を貸しておくんなせえ、お奉行の遠山様がお待ちかねで」
 熊五郎には察しがついていた。遠山様の差し金でもなけりゃ、島から帰ることなどできやしねえ。打ち首獄門のところを生かしておいてくれた遠山の旦那だ、裏のあることは承知の助だった

 葦をかき分けるように、足元がおぼつかないぶよぶよとした地面を抜け、霊岸島に架かる亀島橋を渡ったところに「志乃」という、かなり格調の高そうな料理茶屋があった。その店の二階で、北町奉行遠山左衛門尉影元は待ちくたびれたようで、すでに川魚料理をつつきながら酒を口にしていた。
「おお、熊五郎、御苦労御苦労、五年が経ったか、まあ、飲め、久しぶりだろう、この酒は下りものの剣菱だ、熊五郎が喜ぶと思って取り寄せたのよ」
「へいっ、こりゃあ豪勢なことで、いただきやす」
 おずおずと杯を口に運んだ。熊五郎は身届け物を送ってくれ、島帰りさせてくれたて遠山には頭が上がらない。
「ところで、熊五郎、お前の力を借りたくてな、まあ、それで島からら帰えしたのよ」
「へいっ、もう一度死んだ命でござんす、遠山様のお力になることでしたら、何でもいたします」
「そうか、そうか、お主は地虫でもげじげじじゃあねえからな、、」
 遠山の金四郎は、地虫の熊五郎に酒をすすめ、料理をつまみながら、要件を申し付けた。

 その頃、北町奉行遠山左衛門尉影元は難問にぶち当たっていた。墨田、葛飾、小梅、寺島、亀有、柳町辺りの畑が収穫を迎えようとしていた矢先、江戸は豪雨に見舞われ、川は氾濫し、畑の作物は水に浸かってしまった。胡瓜や茄子スイカなどに甚大な被害が出た。
 このままでは百姓は立ち行かないと、庄屋を中心に奉行にさまざまなお救いを願い出てきた。一揆でも起こされたら、さあ、大変である。幕府も奉行もできる限り百姓を宥めるための策を打ち出した。
 それはそれで、なんとか功を奏して治まったのだが、今度は、百姓が糞汲み取り代金の大幅な値下げを要求してきた。その頃、江戸の糞尿は百姓たちの貴重な肥料で、百姓は糞尿を汲み取って、買っていたのである。
 その代金は「店子の尻で大家は餅をつき」と言われており、長屋の大家の貴重な収入であった。おいそれと値下げには応じられない。百姓との糞代金交渉は紛糾し、まさにふんづまりになり、とうとう、百姓は糞の汲み取り拒否をした。「本所深川糞一揆」の勃発である。

 長屋といわず、屋敷も寺も、遊女屋まで糞が溢れんばかりな事態に遭遇していた。なにしろ、食ったものはみんな糞になって出てくるわけだから、だからといって、食うなともいえず、食った分だけは糞が溜まる。こりゃあ~てえへんだ~。尻に火がついたとはこのことだ。なんとかせねば、江戸が糞に埋もれてしまう。
「今月の月番は北町だったな、遠山、この糞忌々しい問題早急に解決せよ!」
 筆頭老中水野様のご命令で、名奉行遠山金四郎の御登場ということになったわけだった。頭を悩ました遠山金四郎が目をつけたのが、地虫の熊五郎である。熊五郎が八丈島で糞汲みをしていることは、ちん切のお吉の手紙で知っていた。

「て、なわけでな、今江戸は糞が溜まってどうにもならぬ、ひとつ熊五郎、江戸の厠掃除をしてくれ、なに手筈はつけてある、必要な人足も集めよう、場所もな、すぐそこだ、霊岸島の先っぽに小屋を立ててある、桶も柄杓も船も用意してある。
『おから村』と呼ぶことにした。豆腐のしぼり滓よ、役立たずと捨てるが、どっこい、滓の人間にも滓の意地があるところを見せてくれ。よろしくたのんだぞ、、まっ、一杯やってくれ、繋ぎは、そこの見回り同心真壁平氏朗にする。村の中はお前の好きなように仕切ってよい、なにもいわぬ、いわば熊五郎がおから村のお奉行だ、但しだ、百姓を怒らしてはいかん、糞一揆が広がるようでは愚の骨頂だ、そこはわかるな、それとな、江戸の町民だけはに迷惑をかけるなよ、もし、町民といざこざをおこしたら、もう一度島流しだ、よいな」
「へいっ、かしこまりやした、島流しはもう沢山でさあ、おから村、いい名でござんすねええ」

(つづく)

作:朽木一空

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最終更新日  2015.10.18 10:21:31
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