元旦の朝の新聞の片隅にAI(人工知能)が脳のシナプスと繋がる実験が始まった、という記事を見た。えっ?なになにっ?あたいの脳にその記事が張り付き、剥がれそうになかった。
もっと、詳しく知りたくて、ネットの中をぐるぐる回っているうちにたどり着いたのが、Nシステム研究所のAI治験モニター募集というサイトだった。治験バイトをやっていたぐうたらな友達によれば、楽してというより、薬飲むだけ、何もしないで、
結構いい収入になるバイトだと、話には聞いていた。
が、この治験サイトのモニター募集は結構狭き門のようだ。まず登録料として10万円が必要で、本籍地から、生年月日、血液型、学歴、勤め先、特異な学科、または能力、親兄弟の職業、賞罰などなど、個人情報のすべてをさらけ出さなければならなかった。
ちと、怪しい?ホントかな、疑う?登録料詐欺?あたいの心は揺れに揺れてたが、いつも大事なところで足踏みして人生の岐路を間違えていた。あたいの脳にAI(人工知能)が繋がるという画期的な治験なのだ。
ここで飛び込まなくては何も変わらない、ここで飛び込むべきだ。(夢は夜ひらく)のような暗くて寂しい人生のリセットができるのだ。
「みつこ!ここで飛べ、ここがお前の飛ぶ場所だ!」
一月某日、あたいは、動悸を抑えるため、きつめのブラジャーで胸を締め、股をきつく閉じて尿漏れを防ぎ、ありもしない勇気を振り絞り、霞が関某所のNシステムAI研究所の扉の指紋認証キーに指をかざした。
右側の扉が開かれ、ペンギンの姿をした人口ロボットが迎えてくれた。
「ワタシノムネニ、テヲカザシテください」
「ハイッ、ニンシキシマシタ。フカダミツコサマデスネ、ゴアンナイシマス、、、コノ、エレベーターニノッテ、B8ヲオシテクダサイ」
言われるままエレベーターに乗って、B8を押す。B8が地下8階なのか疑う暇もなく、あっという間にB8のランプがつき扉が開いた。今度は、犬の姿の人口ロボットが待っていた。
「フカダミツコサンデスネ、ワンワン、デハ、ゴアンナイシマス、ワンワン、、コチラデス」
研究室に入ると、研究員らしき女性がタブレット見ながら近づいてきた。
「フカダさんの治験モニターの希望は絵画でしたね。ゴッホ、セザンヌ、ユトリロ、歌麿もありますが、、、」
「ピカソはないのかしら?」
「あります、それではピカソにしましょうね。手術室の方へお進みください、不安がらなくても大丈夫ですよ、麻酔して目が覚めてらもう終わりです、、、」
あたいが目が覚めて、ベットから起き上がり、頭を振ってみても、痛くも痒くもない、どこにも変化はなかった。手術したことが嘘のようだった。
「どうぞ、こちらへ、4242室があなたのアトリエになります」
長い廊下を歩いていく、左右にガラス張りの20畳ほどの部屋が並んでいた。1023室の方は書道のAIを埋めました。すでに脳とコンタクトがとれていますので、まだ三日目ですが、すでに書道師範の実力です。
(後編につづく)
作:深田みつこ
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