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カテゴリ:読書(09~ノンフィクション)
「日本人脈記2」朝日文庫 朝日新聞で長期連載されている「日本人脈記」は異色の連載である。一つのテーマをもとに毎日数人が登場して何事かを言って終わる。人物評伝ではないが、数人の記者が書いているらしく、テーマや切り口次第でとても面白いものが出来ることがある。 本当は2007年連載の「手をつなげガンバロー」シリーズ(雨宮処凛、湯浅誠が登場している)を早く上梓して欲しいのだけど、なかなか文庫にならない。これは05年5月から06年2月までの連載をまとめたもの。しかし、かなり面白い。 「韓流の源流」では、現在NHK教育「知る薬」「韓流シネマ抵抗の軌跡」(次回は火曜日朝5:35が最終回)で興味深い映像を紹介し続けている李 鳳宇氏が出ている。彼はシネカノンの社長である。シネカノンが配給したイム・グォンテク監督の「風の丘を越えて」が日本での韓国映画上映の嚆矢である。93年、李鳳宇氏はたった48時間だけの臨時パスポートでこの映画を買い付けたらしい。98年釜山国際映画祭に「のど自慢」をもって訪れたときに、雨で映像が途中で切れるというハプニング。そのとき、4千人の観客を前にとっさに前に出て「のど自慢をやりましょう」と言ったらしい。主演を務めた「ハウンドドッグ」の大友康平がヒット曲「フォルテシモ」を歌う。観客も次々と出てきて歌った。当時は解禁前で日本語はご法度、そんなことは嘘のような一夜だったらしい。「映画をやっててよかったな」 この「2」はアジア関係の記事をまとめている。ベトナム戦争に関しての章では、石川文洋、中村悟郎、土門拳などが登場する。他にも満州、留学生、国連、沖縄の章にもいろんな人が登場している。 沖縄の章で、「ウルトラマン」の原作者金城哲夫氏が出ている。不慮の事故で76年に37歳で早世。 その作品には、独特の感性と発想があった。脚本家上原正三(69)は語る。「金城のウルトラマンは、怪獣を殺さず、懲らしめた。『人間の世界に出てきちゃダメだ。帰れ。』と追い返した」 東京に住み、故郷を誇る自称「在日琉球人」の上原は、沖縄を米国、日本に対するマイノリティー(少数者)と意識する視点が金城にもあったとみる。「彼にとっては怪獣は、理解されないマイノリティーだったのではないか」 現在は「大逆事件」シリーズを連載中。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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