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テーマ:映画館で観た映画(8540)
カテゴリ:洋画(12~)
『ブルージャスミン』 リメイクものと原作ものと大作の続編しか作らなくなったハリウッドの中で、毎年毎年、新作のオリジナル脚本を書き、監督もつとめている御歳78才の才人がいます。ウディ・アレン監督です。 昔はニューヨークセレブの生活しか描かないアレンの作品は好きではありませんでした。ところが、『男はつらいよ』シリーズも終わりを告げて、もう恒例のコメディ映画もなくなったのかな?と思ったころにアレンの作品『世界中がアイラブユー』を観て、気の弱い知識人が恋をしては失恋してゆく様に、あゝ人間て、その面白さ哀しさを描くのに国とか金持ちとか関係ないんだ、と思ったのです。それからはアレンの作品を年一回観ないと気持ちが落ち着かなくなったのでした。 『アニーホール』 『ミッドナイト・イン・パリ』などのロマンティック・コメディ路線が有名な監督ですが、これまでも『マッチポイント』など笑いを封印したこともありました。今回も久しぶりのシリアス路線で、ひとりの女性の転落人生を描いています。ジャスミンを演じたケイト・ブランシェットはこれでアカデミー主演女優賞を獲りました。 大富豪のジャスミン夫(アレック・ボールドウィン)は、実は大詐欺師。夫が逮捕されて彼女は一文無しになり妹の家に間借りをします。虚言と現実逃避を繰り返し、ひたすら堕ちていく元セレブのジャスミン。 華やかな生活が好きで、虚栄心とプライドで塗り固められたジャスミンと、堅実な生活をしているけど粗野な男が好きで、貧乏から離れられない妹のジャンジャー(サリー・ホーキンス)との対比がとても上手い。ジャスミンは終盤に至るまでほとんど心の病を患っていたとは感じさせません。至る所に病的な部分はあるのですが、それを彼女の性格だと思わせるケイト・ブランシェットの演技。この微妙な匙加減が、ラストの余韻を持たせる終わり方に繋がっていました。 ジャスミンの悩みは、もしかしたらウディ・アレンの悩みであったのかもしれません。映画興行は詐欺行為に似ています。出資者からいつ「騙された!カネ返せ」と言われるかもしれないヤクザな稼業です。シリアスだけど、何処かおかしみがあり、哀れでもある。アレン作品にはいつも現代人の不安定な心があります。もうこんなオリジナル脚本を書ける人はハリウッドには現れないかもしれません。(2014年公開米作品 レンタル可能) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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