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テーマ:映画館で観た映画(8358)
カテゴリ:邦画(12~)
〆切よりも、二日遅れで投稿した労組機関紙連載の今月の映画評です。幸いにも、落とさずに済みました。ありがたや。
「太陽の蓋」 原発事故にインスパイアされた「シン・ゴジラ」が、夏映画の話題をさらって暴れまくっていた頃に、ひっそりとシネマ・クレールで上映されて静かにフェイドアウトしていった、日本最初の本格的な原発事故映画がありました。この作品も頻繁に閣議や危機管理センターの場面が出て、現代ポリティカル映画になっています。フィクションだと謳ってはいますが、菅直人(三田村邦彦)や枝野幸男(菅原大吉)などの政治家の名前は全て実名で出ていていることに、事実に即して作っている製作者の自負を、私は感じました。私はゴジラと共にこれがコインの裏表の作品だったような気がしてなりません。 しかし、この作品は残念ながら、傑作とはなりませんでした。不要な台詞や場面があったり、テンポが悪い。なおかつ、製作者の想いかもしれないが、民主党(当時)の事情に時間を割きすぎている。しかも、最大の悲劇を免れたのは、たまたまだったのか、それとも何かあったのか、1番大事な場面が描かれていません。それでも私はこの作品を皆さんに紹介したい。民主党プロパガンダ映画ではない。「人はすぐに忘れるものだ」「まだ何も終わっていない」ウソは描かれてなく、誠実な作品だと思います。去年何故か、全てのテレビ局は一切宣伝しませんでした。これが日本人の民度なのかもしれません。私は、こういう作品を記憶することで、反原発運動も豊かに出来ると思います。 いま、国民のどれほどが、あと一歩のところで、第四号基がメルトダウンし、東京を含めた250キロ圏内が全滅するところだったと知っているだろうか。太陽の蓋をコントロール出来なくて、そして今もコントロール出来ていないことを知っているだろうか。 東京電力(映画の中では東日電力)の隠微体質は、この映画の中で幾つも幾つも出てきます。国民のどれだけの人が、電源車が到着してもプラグが合わなくて、冷却機が作動しなくかったことを知っているだろうか。その他、東電が情報を遮断して官邸対応が後手後手に回ったことを認知しているだろうか。 「シン・ゴジラ」のテンポで作れば、この2倍の情報量と緊密したドラマが作れるかもしれない。やがて作るべき本格的なエンタメ原発事故映画のために、今はこの貴重な作品を一人でも多くの人が見て欲しいとも思う。 実はDVDには、特典映像として3つの各数分のスピンオフドラマがついていました。これが下手をすると本編よりも少し良い。(佐藤太監督2016年作品レンタル可能) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017年08月16日 13時31分58秒
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