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テーマ:本日の1冊(3684)
カテゴリ:読書(ノンフィクション12~)
「生活保護なめんな」ジャンパー事件から考えるー絶望から生まれつつある希望 生活保護問題対策全国会議(編) あけび書房 今年の1月、小田原市で発覚したジャンパー事件の顛末については、「ビッグイシュー」の雨宮処凛さんの報告である程度は聞いていた。7月にこの本が出たのは、つまり希望の持てる方向で展望が生まれつつあるというのは、極めて珍しい「素早い対応」があったということなのだろう。 小田原市は、単なるジャンパーやホームページやしおりの問題ではない、ことが話し合われ、2月末に対策検討会議が設置、市井の専門家だけではなく、元生活保護受給者も参加した。そこまでは私も聞いていたので、この本を紐解いた。 この本は、縦文字ではなく、横文字で文章が書かれている。つまり、読者の対象は主に自治体職員の専門職を想定しているのだと思われる。実際、ぜひ福祉事務所のケースワーカーには、またはそこに関係する自治体職員には、この本を読んでいただきたいと切望する。そして自分の仕事を振り返ってもらいたい。 しかし、一方で私のような一般市民も手に取るべきだと思う。ここでは、この問題の問題たる所以が「ジャンパーという明らかな形があるために問題が発覚しましたが、「目に見えないジャンパー」をまとっている職員は全国各地にいるのではないでしょうか」(81p)という問題意識で書かれている。そのために、ホームページやしおりのチエックの方法も詳細に書かれている。その程度は、一般市民も出来るのではないかと思うからである。 この事件を受けて市民の反応は、批判的なものと同時に担当職員を支持する人たちも相当数いたと言う。その人たちに関して言えば、3章の渡部潤氏と藤䉤貴治氏の対談がこの事件の概観を1番わかりやすく書いていると思われるので、その対談をキチンと批判できるかせめて確かめて欲しいと思う。生活保護パッシングしている人たちのほとんどは、私は「無知」だと思っている。 ただ一点だけ、この本で不足している部分がある。「パッシング」の人たちは、最後は子供が捨て台詞を吐くように一様にこう反論するからである。「それでも、福祉予算から生活保護で多大なお金が出ている。それを削るのは、役所の義務ではないか?」 それに対しては、全面的に展開していないが、雨宮処凛さんが根本的なことを書いている。それを最後に抜き出したい。 そうして困窮者に寄り添う支援が実現すれば、結果的には本人にとっても自治体にとってもいいことだらけなのである。 例えば、滋賀県野洲市の市長は、税金滞納を「貴重なSOS」と語り、「ようこそ滞納いただきました」と言う。 税金を滞納する人は、国保料や社会保険料も納めていないことが多い。生活に困っていると感じたら、野洲市ではそれぞれの課が連携して市民生活相談課に案内しているのだと言う。そうして生活を立て直す支援をする。水道料金や保育料、給食費の滞納があった場面も把握する。そんな風に市民の「困窮サイン」にいち早く気がついておけば、支援も早くできる。そうすることで、結果的にコストがかからない。早い支援が確実な納税につながる。(131p) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017年08月26日 23時35分28秒
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