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カテゴリ:読書フィクション(12~)
「将軍」芥川龍之介 おそろしいはなしです。 青空文庫で、20分ぐらいで読めます。 伏せ字だらけ、芥川だけでなく、なにやらいろんな方の怨念が棲んでいそうな文章です。 大正10年の発表。N将軍と書いていますが、誰が読んでも日露戦争を勝利に導き、明治天皇崩御の際に殉死した乃木希典について書いたと分かる小説です。 日露戦役での将軍の白襷隊への激励、戦時に間諜を発見する将軍、慰問団劇にクレームをつける将軍、亡くなった後に青年が持つ違和感の四章で成っています。 乃木の殉死については、漱石も(「こころ」)鴎外も(「阿部一族」)それなりに反応を示した大事件でありました。「なんか嫌な感じ」と文豪たちは思ったのだと、私は解釈しています。 乃木希典は、決して自ら「死んで神様になりたい」と言ったことはないと思います。芥川も、この作品で一言もそういうことは書いていません。ただ、最後の青年の違和感と、この作品の5年前に「乃木神社」が建てられ、実は現代まで綿々と「格式ある神社」として続いているという事実を知るにつけ、なんかこの日本という国が、私はおそろしいのです。 最後に第2章「間諜」の一節。 将軍に従った軍参謀の一人、──穂積中佐は鞍の上に、春寒の曠野を眺めて行った。が、遠い枯木立や、路ばたに倒れた石敢当も、中佐の眼には映らなかった。それは彼の頭には、一時愛読したスタンダアルの言葉が、絶えず漂って来るからだった。 「私は勲章に埋った人間を見ると、あれだけの勲章を手に入れるには、どのくらい××な事ばかりしたか、それが気になって仕方がない。……」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2019年08月04日 06時36分04秒
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