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2020年08月12日
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「十二世紀のアニメーション 国宝絵巻物に見る映画的・アニメ的なるもの」高畑勲 徳間書店

現在岡山市で開かれている「高畑勲展」の図録で紹介していたので紐解いた。本書はたいへんな労作。絵巻物に、マンガ・アニメの源流があると説いたものである。なんだ、そんなことは良く言われていることじゃないか、と思った貴方、違います。こんな風にキチンと分析した書物は、それまで出版されなかった。実物を見せながら話を展開しないと、話が始まらないからである。本書は横開き多色刷りの豪華本であるが、著者が有名なために3600円の安価で出版できた。

日本のマンガとアニメを高畑勲はとりあえずこのように定義する。
「おもに輪郭線と色面で描かれた
さまざまな絵を並べ(平明な絵で描かれ)
それに言葉をそえて
時間とともに(コマ割やフィルムの流れとともに)
お話をありありと語ったもの」
これはまさに中世からの絵巻物や絵とき、江戸時代の草双紙や浮世絵、覗きからくり、からくり幻灯芝居に共通する特徴である。しかも、日本には、子供から大人まで、庶民の生活や立ち振る舞いを好奇心いっぱいに活写した絵が多く、そういう絵は、ちょうどマンガを読むときのように、描かれた内容を追いつつ、画面に眼を近づけて細部の「絵を読」んではじめて面白さがわかるように描かれた、という。

もちろん、日本で花開いたマンガやアニメは、このような文化伝統を学んで作られたのではない。(←ここをはっきりさせているのは高畑勲の立派な所)海外から多くを学んで出発したものだ。ただ、日本において、何故こんなにもマンガやアニメが盛んになったのか、「その源泉をたどれば、やはり絵と言葉で語るという、私たちの文化的な好みと欲求の伝統に行き着くことになります」。

日本人は何故こんな文化的嗜好が発達してきたのか?本当のルーツは、日本語の独特の言語体系だという。漢字と訓読み、カタカナとひらがな、漢字かな混じり文を発明したのが日本語である。それによって、日本人は文字を視覚的な「絵」として認識してきた、と高畑勲はいう。13ヶ所に渡りその証拠を挙げているが、例えば、日本人は読みは分からなくても意味がわかる漢字をいくつも「絵」として知っている、名前を漢字の選択によって視覚的なイメージで多様化した(征子、雅子、麻紗子、まさ子。漫画、まんが、マンガ)、オノマトペの豊富さ、語り絵は文盲に対する絵とき用ではなく識字層の楽しみのためにまず制作された、等々。

そうして、高畑勲は「信貴山縁起絵巻」「伴大納言絵詞」について、そのアニメ的手法を解説する。その緻密さは、正に一つのアニメ映画を監督するくらいである。「シークエンス」「シーン」「クローズアップ」「フェイドアウト」「ズームイン、パン」などの用語を多用して、十二世紀に絵巻物が一挙に世界に例を見ない「時間の表現」「視覚効果」を自覚的に狙ったすごい映像作品である事を見せる。

この2つの絵巻物と「彦火々出見尊絵巻」「鳥獣人物戯画」は、全編を縮小版であるが解説している。有名場面を知っている人は多いが、全編をカラー絵を見ながら解説されたのを読んだのは初めて。それだけでも価値がある。

高畑勲は、1人の絵師の仕事じゃない。脚本家やプロデューサーに似た集団的な作業の賜物だと喝破する。その他、ここで書いている独創的な意見は多い。

彼の指摘の一つ一つが美術史的に大発見だと思うのだが、素人発言としてあまり注目されてきていないのではないか?とさえ思った。





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最終更新日  2020年08月12日 07時16分59秒
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