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名無し人の観察日記

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2008.01.05
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テーマ:戦争反対(1188)
カテゴリ:戦争と平和
 半月近く前のニュースですが、今年の日本の防衛にとって大きなニュースだと思うので紹介します。
 日本が進めている弾道ミサイル防衛(MD)のうち、陸上配備型のパトリオットPAC3は既に実戦配備されていましたが、この度海上自衛隊が初の海上配備型MD、スタンダードミサイル3(SM3)の発射・弾道ミサイル撃墜試験に成功し、また一歩実戦配備に近づきました。
 
海自イージス艦、海上配備型迎撃ミサイル(SM-3)の迎撃実験に成功

 今回の試験は予め標的の弾道ミサイルの発射時間、飛翔コース等が決まっている一番簡単なバリエーションの試験で、とりあえず海上自衛隊の艦船が手順どおりにSM3を運用できるかどうかを証明するものでした。ぶっちゃけて言うと参考書持込OKの試験みたいなものですが、いきなり難しい試験をやる事はありませんので、今後さらに能力向上のための演習や試験が行われる事になるでしょう。

 さて、国内事情から抑止力として核兵器の開発・配備ができない日本としては、中国、ロシア、北朝鮮等が保有する弾道ミサイル攻撃に対する防御力を確保する手段として、MDは重要な意味を持っています。
 現在自衛隊は「普通の」攻撃に対する備えは十分に持っています。敵国が爆撃機を差し向けてくれば、それを迎撃・撃墜するための戦闘機を繰り出し、艦隊が迫ってくれば自衛艦隊で迎え撃ち、もし上陸されれば、陸上自衛隊の各部隊が追い返す……といった具合ですが、今まで弾道ミサイルだけは防ぐ手段がありませんでした。もし弾道ミサイルを日本に向けて発射されたら、低い確率に賭けて、通常兵器による迎撃を試みるしかなく、被害を食い止めるどころか軽減する見込みすらない状態でした。
 例えるなら、日本はK-1にボクシングスタイルで挑む選手で、ガードを固めての殴り合いには無類に強いものの、関節技や足技で攻められたらどうしようもない、という状態だったのが、MDを装備することでそれらにも対応できるようになるかもしれなくなったわけです
 
 一方で、MDに反対する意見も依然根強く残っています。並べてみますと……
 
・高価過ぎる。
・信頼性が低い。
・対米従属を強めるものでしかない。
・軍事バランスを崩壊させ、日本が侵略国家になる元凶だ。
・どうせ防衛利権の温床に決まっている。
・MDなんかより自前の核ミサイルを持て。
・実はMDは攻撃兵器だ。
・弾道ミサイルのほうが進んでいるから役に立たない。


 といったあたりが代表的な意見でしょうか。
 
 まず高価過ぎる、という点ですが、MDに掛かる費用は一兆円とも言われています。実際にはどれくらい掛かるかまだわかりません。MDは建造途上のシステムであり、今後もレーザー兵器の開発など課題が残っています。
 しかし、ミサイルが飛んでくるような最悪な状況になってしまった場合、MDが無くほとんどのミサイルが日本に落ちてくるようでは、被害は一兆円では済まない事は確実でしょう。もし東京を核ミサイルが直撃するような事になれば、もはや国家崩壊確実の状況です。
 戦争になるという最悪の状況で、少しでも被害を減らすためのシステムに投資する事は、私には無駄とは思えません。MDとは、いわば自動車のエアバッグみたいなものです。事故に遭わなければ使う事はありませんが、これを無駄だという人はいないでしょう。
 
 次に信頼性の問題ですが、低い低いといわれている割には、実験での成功率は結構高く、地上配備型のパトリオットPAC-3の成功率は八割強(六回中五回成功)、SM-3のそれはやはり八割(十三回中十一回成功)で、それほど悪い数字には思えません。百パーセントで無ければ意味が無い、という意見もあるかもしれませんが、現実には不可能な完全主義こそ無意味なので、こういう意見は無視して構いません。
 ちなみに、低いという主張を掲げる人の中には、意図的なのか本気なのかはわかりませんが、湾岸戦争時のパトリオットのスカッド撃墜率(10%程度らしい)を挙げて、だから信頼性が低いのだと言い張る人がいますが、現在MD用に配備されているPAC-3はELINTという弾道ミサイル迎撃用ミサイルの発射プラットフォームとして、既存のパトリオットシステムを転用したものです。つまり、ミサイル自体は全くの別物であり、湾岸戦争を引き合いに出すのは不適切です。
 
 対米従属という問題ですが、確かにMDの運用にはアメリカの協力が不可欠です。発射された弾道ミサイルを発見する早期警戒システムもアメリカのそれに相乗りさせてもらう形ですし、技術面でも多大な協力を受けています。
 これをして、MDの運用にはアメリカの協力が不可欠=日本はアメリカに逆らえなくなる=アメリカの侵略戦争に日本が駆り出される、という三段論法を持ってMD批判をする人がいますが、正直言って私はこういう主張をする人の正気を疑います。同盟という枠組みの意味を完全に誤解しているとしか思えません。
 仮にアメリカがそう言う意図を持って日本に対し「MDの運用を止められたく無かったら言うことを聞け」という脅迫的な言辞を弄したら、その先に待っているのは間違いなく日本の反米感情の沸騰です。下手をすれば同盟は崩壊し、日本は今もっている技術を手土産にロシアや中国側に寝返りかねません。
 ある同盟が一方の国のみに利益をもたらす構造になったら、その同盟は確実に破綻します。お互いに利益があるからこそ同盟は維持されるものです。アメリカが一方的に日本を搾取したり便利扱いしたりして、日本がそれに逆らわない、というのは被害妄想だと私は思います。
 なお、MDが無ければ日本の核抑止力は完全にアメリカの裁量のみで運用されているかの国の核戦力によってのみ担保されるわけですが……というか冷戦時代はまさにそう言う状態でしたが、その時代でさえアメリカは日本を搾取したり便利遣いにしようとはしなかったのですが、何故でしょうね?
 
 軍事バランス云々に関しては、日本がMDを持つと、弾道ミサイルによる報復を恐れる必要が無くなり、侵略がやりやすくなるだろう、という考えのようです。対米従属が~と同じくらい馬鹿馬鹿しい意見ですが、結構見かけます。
 そもそも日本には自前の核ミサイルが無く、周辺諸国にはそれがある、という時点で軍事バランスもヘッタクレもない話なんですが、日本は侵略国家だと思い込んでいる人たちには、そう言う現実は見えていません。
 
 防衛利権に関しては、まぁあるだろうな、とは思います。というかお金が動く以上利権がないと考える方がおかしいです。
 問題はそこで不正な金の動きがあるかどうか、なんですが、基本的にMD反対派は防衛費=悪いお金の使い方という考えなので、証拠が無くても不正だと決め付けているようです。
 
 MDより核ミサイル……という意見は検討の余地もありません。確かに核報復システムを自前で持てば、MDよりも確実な抑止力が手に入る可能性はあります。
 その代わり、日本は国際的な非難を浴び、孤立化するでしょう。また、核全廃につながる可能性があるMDと異なり、核保有はあまりに後ろ向き過ぎる態度で、到底支持できません。
 
 MDは実は攻撃兵器だ……という意見はたまに見ますが、無知の為せる業であり、無視すべきものでしょう。そもそも、こういう意見を述べる人はミサイルに種類があることすら理解していなさそうですし。
 
 弾道ミサイルのほうが進んでいる……というのは、多弾頭式(一つのミサイルに複数の核爆弾が積まれている形式)や、囮を発射する形式のミサイルに対しては、現在のMDでは通用しないのではないか、という意見のようです。しかし、これもあまり意味のある疑問とは言えません。「できないからやらない」というのは、MDに限らずどんな事においても最低の言い訳です。「できないならできるようにしよう」が正解であり、目指すべき道です。
 
 私が反対意見の中で「まぁ、ある程度正当性があるかな?」と思うのは「高価過ぎる」くらいです。私は高価だとは思いませんが(国民一人当たり10000円で核ミサイルが防げるかもしれないなら十分)、これは人それぞれお金の感覚が違いますので。後は全部ダメです。
 
 ちなみに、「日本独自のMDを作ったほうが安上がりに違いない!」という意見も見たんですが、全く根拠が無かったのには笑いました。日本の技術力は世界に誇るべきものだとは思いますが、MDの探知技術はただの技術ではなく、偵察・情報衛星網による一種のインフラです。そしてインフラとは一朝一夕に作れるものでもなければ、安上がりに作る方法もありません。
 だからこそ、アメリカの作ったそれを利用させてもらうことで安上がりにしているわけで、基盤もなしにMDが作れる、と考えるのは、配管もせずに蛇口だけで水が出ると思い込むのと同じです。





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Last updated  2008.01.05 23:24:02
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