テーマ:ミステリはお好き?(1432)
カテゴリ:本の話(日本の作家・や行)
米澤穂信『氷菓』を読み終えました。
氷菓 いつのまにか密室になった教室。毎週必ず借り出される本。あるはずの文集をないと言い張る少年。そして『氷菓』という題名の文集に秘められた三十三年前の真実―。何事にも積極的には関わろうとしない“省エネ”少年・折木奉太郎は、なりゆきで入部した古典部の仲間に依頼され、日常に潜む不思議な謎を次々と解き明かしていくことに。さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリ登場!第五回角川学園小説大賞奨励賞受賞。 私の買った文庫版の表紙は、校舎の階段のイメージフォトです。 私にも高校生時代があったわけですが・・・あのころは本当に、毎日こういう階段を、何度も上ったり下りたりしていたものです。 身体を動かすのが嫌いで、少しでも楽なルートで・・・と思いながら、友人を捜して、何か面白いことを求めて、あるいは移動教室で、学校の中をよく歩きました。 私の通った高校は、戦前には大学の校舎として使われていたそうで、私の在学していた当時すでに、不具合箇所の修繕をしようにも設計図が残されていないという代物でした。 窓はサッシではなかったし、校舎の端は妙に暗くて、文化祭前などに遅くまで残って作業していると、皆の頭の上をバサバサバサッと飛んでいくものがあります。 「あ、蝙蝠!」「また出た!」 そんな声を上げながら、「どこにいるんだろうね、昼間は?」と調べるでもなく文化祭の準備をしていたものです。 古い建物にはあちこちに傷や塗装しなおした跡が残っていましたが、中に、何か大きく文字が書かれた跡を、白ペンキで塗りつぶしたところがあったのを覚えています。 教師に尋ねるのはタブーとされていたそれは、語り継がれていたところによれば、安保闘争で大学に嵐が吹き荒れていた時代、我が高校も同じくして学園紛争していたという・・・ 当時袋叩きになったという噂の先生もおられました。 ・・・ そんなことを、とてもリアルに思い出すきっかけになった一冊でした。 「省エネ」を信条にする主人公・奉太郎は「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことは手短に」がモットー。 部活に、勉強に、恋愛に、熱い高校生活を送っている級友たちを尻目に、俺の毎日は色に例えるなら灰色だな、と言ってのけます。 思い出すのは同じ作者の別シリーズ、「小市民」をモットーにする高校生・小鳩君です。 ただ、小鳩君が自分の力を知っていてそれを使うことで身の回りのバランスが崩れるのを怖れ、努めて避けようとしているのに対して、奉太郎は、未だ自分の持てるものを知りません。 自分が何を求めるのか、どうするのが好きなのかにも気付いていないようです。 それなのに自意識ばかりが強い・・・ 高校生にありがちな迷いや焦りがうまく描かれていると思いました。 姉の強い勧めで入部した廃部寸前の古典部で、幽霊部員を決め込もうとしていたはずが、奉太郎の毎日は思わぬ方向へ進んでいきます。 個性豊かな仲間と出会い、身近な謎を解き、古典部の文集のバックナンバーを探すことから、学校の封印されていた歴史を紐解いてゆくのです。 短編仕立てになった一つ一つのミステリーは、それほど捻ったものではなく、楽についてゆくことができました。 とは言え、日常の謎のせせらぎから次第に大きな流れになってゆく物語は、高校生たちが次第にかかわりを深め、省エネだったはずの奉太郎が自分でも気付かず興奮してゆく様とあわせて、一気に読ませてくれる面白さでした。 本著タイトルの『氷菓』は、古典部の伝統的文集のタイトルでもあります。 その命名の謎も、奉太郎たちはさぐるのですが・・・ そういえば。 私は、高校生のころ、当時デビューした榊原郁恵ちゃんに似ているとよく言われていました。 そんなことも思い出しました。 ヒットしていた郁恵ちゃんの『夏のお嬢さん』が、読み始めたころからずっと私の頭の中で鳴っています。 ♪夏のお嬢さん ♪ビキニがとっても似合うよ!刺激的さ~クラクラしちゃう~ ♪アイスクリーム!ユースクリーム!好きさ!! (読まれた方にだけ、わかるオチでした) 続編『愚者のエンドロール』をすぐに読もうとしていたところ、図書館に予約してあった本の順番が来たので、ちょっとお預けになりました。 その本は・・・とても楽しみに待っていた本です。 「シーズン開幕のあるスポーツ」をテーマにした今話題のベストセラー! お正月前に手にすることができて、良かった☆ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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