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テーマ:辛口映画批評(354)
カテゴリ:試写会2010
客入りは1~2階席はほぼ満席、3階席は未確認。
シェルター 映画の話 解離性同一性障害(多重人格)の疾患を認定していない精神分析医カーラ(ジュリアン・ムーア)。ある日、多重人格とおぼしき男性デヴィッド(ジョナサン・リス・マイヤーズ)と引き合わされたカーラは、彼の症状を否定するために身辺調査を行い始める。そんな中、デヴィッドが25年前に亡くなった故人であることが判明し……。 映画の感想 本作は謎の患者に振り回され翻弄する主人公と同じように、方向性の見えないドラマ展開に振り回され観客も疲労困憊してしまうだろう。映画は多重人格を認めない精神分析医が二つの人格を持つ青年患者と面会するミステリー調で幕を開けるが、映画は主人公が謎の患者を調べるうちに驚愕の事実に直面するという展開で、映画前半はサスペンスミステリーであるが、映画が進むうちに段々とホラー色を強めて行き、最終的にはオカルトの領域に突入する3段変化するトンデモ作品である。 以下ネタばれ注意(今回は特にネタばれしたら面白くなくなる文字は白抜き反転しています) 本作の作風は妙に説明的であったり、口足らずであったり、強引に事を進めようとしたりで映画を見ていて非常に疲れる。特に謎の患者の中に潜む別人格を主人公が探るうちに素性が見えてくるのだが、台詞だけで元人格の過去の出来事を説明するのでまったく頭に入ってこない、これは映画として致命傷である。元人格の素性は本作の中で最重要な部分だけに、回想シーンなどを使い観客に理解させる必要がある。本作はその辺はまったく描かず、作り手だけが理解してサクサクと物語を展開させてしまい、置いてきぼりになった観客は映画を見ていて戸惑うばかりである。 本作はジュリアン・ムーア演じる精神分析医・カーラが主人公であるが、真の主人公は謎の患者を演じたジョナサン・リス・マイヤーズであろう。キャラクターの設定上、彼は一人で複数の人格を演じる訳であり、映画前半こそ“多重人格者”と思わせていながら、中盤辺りでは“いたこ”なのかな?と思わせていながら実は・・・、の展開が実に強引で、日本人とは宗教的観点の違いもあるかもしれなが、映画は急に胡散臭い路線を走り出して、映画後半は謎の患者がいつのまにか連続殺人鬼みたいな扱いになってしまう安易な展開も駄目である。 本作のポイントとなる“シェルター”なる儀式も「呪怨 パンデミック」の中で、ホラーキャラの伽耶子が少女期にいたこの母親から無理強いでやらされていた儀式に似ているのもマイナスポイントである。 それから本作は謎だらけである。謎の患者と接触した人物が次々と謎の病にかかり怪死してしまうが、あれは何だったのだろうか?この事件の大元となる神父の仕業なのか?呪いなのか?よく判らない。本作は根本的にイメージ先行であり、謎の患者が人格が変わる瞬間の首仰け反りポーズを筆頭に、咳で始まり背中の発疹が発症して怪死事件の種明かしも漠然としたままで幕引きをしてしまうので性質が悪い。 そのくせ、ビデオに写った黒い影の正体が突然音の波形と判ってしまったりで強引な演出には絶句である。本作の大オチは「エクソシスト」のラスト前の悪魔がリーガンからカラス神父に乗り移るパターンと同じである。 ジュリアン・ムーアと言う女優は数々の良作に出演していながら、何を血迷ったのか時たま「エポリューション」「フォーガットン」「NEXT ネクスト」と言った珍作に手を出してしまう、本作も間違いなく先の3作品と並ぶ珍作である事は間違いない。 映画「シェルター」関連商品 本作のマンス・マーリンド監督作品 ジェネシス/サーシャ・ベッカー[DVD]【返品種別A】 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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