第4章 1訴訟の終了
訴訟の終了は判決に決まっているじゃないかとお考えかもしれません。確かに原則はそうです。しかし、原告か被告が争う気がなくなったのに裁判を続けるのは時間の無駄でしょう。また、原告と被告が仲直りをして争いを止めようと思う場合もありえます。以上のような場合には判決を待たずに訴訟を終了させてもよさそうです。そこで、以下のような制度があります。まずは、「訴えの取下げ」です。原告が訴え自体を無かったことにしようとするものです。(訴えの取下げ) 第二百六十一条 1 訴えは、判決が確定するまで、その全部又は一部を取り下げることができる。 2 訴えの取下げは、相手方が本案について準備書面を提出し、弁論準備手続において申述をし、又は口頭弁論をした後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。(以下略)訴えの取下げは1項によるといつでもできます。しかし、訴えの取下げは訴え自体を無かったことにするのですから、裁判上勝敗がつきません。ということは、原告は負けそうになったら訴えを取り下げれば自分が負けたことにならないとも思えます。しかし、それでは被告にしてみればいい迷惑です。やりたくも無い裁判に付き合わされて、やっと勝てそうになったら訴えを取り下げられて勝ち負け無しといわれたのでは腹の虫が収まらないというところでしょう。そこで2項をご覧ください。「訴えの取下げは・・・相手方の同意を得なければ」できないとかいてあります。つまり、被告の同意が無ければ訴えは取り下げられません。例えば三島さんが清水君を訴えた場合、三島さんは清水君の同意が無ければ訴えを取り下げられないのです。これなら誰も不満は出ませんね。清水君が「いやせっかく勝ちそうなんだから,訴え取下げは認められない」と思えば裁判は続行しますし、「そうか三島さんも分かってくれたか」と思えば裁判を終了させてもいいでしょう。これが「訴えの取下げ」です。次に訴えの取下げとよく似ているのが、「請求の放棄」です。原告が試合放棄する点では訴えの取下げと同じですが、請求の放棄は裁判を続行させているのが最大の違いです。つまり、原告が「訴えはしましたけど、私の負けです。どうか、被告勝訴の判決を出してください」と申し出るのが「請求の放棄」となります。例えば、三島さんが清水君を訴えたものの、三島さんが「清水君を勝たせてください」と申し出ることを言います。この場合、訴えの取下げと違い、法律上三島さんが負け清水君が勝ったことになり勝ち負けがつきます。原告が試合放棄する手段があるのなら。被告が試合放棄をする手段があっても良いでしょう。それが「請求の認諾(にんだく)」です。被告が「確かに原告の言うとおりだ。裁判官殿、もう争いませんから原告勝訴の判決を出してください」と申し出るのが「請求の認諾」です。例えば三島さんが清水君を訴えた場合において、清水君が「三島さんを勝たせてください」と申し出ることをいいます。この場合も法律上清水君が負け、三島さんが勝ったことになり、勝ち負けがつきます。それ以外には、ニュースで「○○裁判所で審理されていた△△事件が本日、和解が成立しました」と聞いたことが無いでしょうか。和解も訴訟の終了手段なのです。学問的には「訴訟の係属中(裁判が進行している最中に)、相互に譲歩することによって訴訟を終了させる旨の合意」を言います。(分かりやすくするためにかなり端折って書いています。本当は、「訴訟係属中に、両当事者が、訴訟物をめぐる主張につき、相互に譲歩することによって訴訟を全部または一部を終了させる旨の期日における合意」を言います)お互いが歩み寄って、お互いが訴訟を終了させる意思になることが特徴的です。(「請求の放棄」「請求の認諾」は自分の一方的意思ですることができました。)例えば、三島さんが清水君に「100万円支払え」と訴えた裁判において清水君が50万円支払うことで合意して裁判を終了させようとした場合、三島さんも清水君も歩み寄ってますから「和解」と言うことになります。以上が当事者の意思で訴訟が終了する場合です。明日は当事者の意思によらないで裁判が終了する例、つまり、判決について述べます。