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台湾役者日記

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2005年07月13日
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カテゴリ:創作物件
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 さっきここに来たときには床は調べていない。今度は、正面奥のシンクの前に膝をついて、低い位置から眺めてみた。パントリーの内部は薄暗いが、それでもシンクの上の開け放たれた窓からやわらかい外光が差し込んで漆喰の床をぼんやりと照らしている。よく見ると、たしかに、床の上を、短辺が肩幅よりやや広く長辺が一歩の歩幅よりやや長いくらいの長方形の形に、細い線が走っていた。これに間違いない。これが、いつか何かを女が取り出そうとしていた、あの床の下の空間の蓋なのだ。

 蓋は床と完全に一体化しているように見えた。表面は周囲の漆喰とまったく同じで、予めそこに蓋があると知らなければこの長方形が蓋の輪郭であるとは気がつかないと思われた。ほかの部屋と同様、ここの床にも表面に貝殻が埋め込まれている。もちろん、歩行の邪魔にならぬよう、埋め込まれた貝殻は徹底的に研磨され、あたかも床にプリントされた平面装飾のようにおとなしく二次元化されてしまっているのだが、蓋の輪郭線はその床に埋め込まれた貝殻の平面像をも各所で横切っていた。要するに、床に埋め込まれた貝殻の散らばりは蓋の上にもそのまま拡張されていて、蓋とその他の部分とはますます見分けがつきにくくなっているのだった。


(つづく)



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Last updated  2005年07月15日 03時23分08秒
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