私は平成8年から蒲郡の警察医もしています。検案は警察医の仕事ではありませんが、頼みやすいので、しょっちゅう呼ばれます。でも昨年市民病院の常勤を辞めてから、遠くに出かけていることも多いので、断る回数も多くなりました。
昨夜は久し振りに2件検案に呼ばれました。一色のお魚広場でうなぎを買って、さあ帰ろうとしていたら、呼ばれて蒲郡へ逆戻り。それは病死でしたが、髄液を採ったら、血性で脳内出血としました。
それから家に帰って、ウナギを食べたら、また呼ばれました。首に荷造り用ビニール紐を巻いて女の人が死んでいると、・・・。最初は殺人事件かということで、県警本部から検視官もきていました。
争った形跡はなく、トイレの消臭剤を少し飲んだ形跡があること、自筆の遺書が見つかり、家人にも死にたいと漏らしていたことなどから自絞死と考えられました。ビニール紐が首に5重に巻いて縛ってありました。自絞死と言うのは自分で自分の首を絞めることですが、手で締めたのでは意識がなくなると緩むので、成功しません。しかし、紐を使って何重かにして意識のなくなる前に縛れば可能です。
蒲郡で年間80件ほどの不審死があり、そのうち約20件が自殺です。首吊りは最もポピュラーな方法で約4割くらいは首吊りです。首吊りは自分の体重を利用して締めますので、定型的縊死(足が地についてない)の場合、頚動脈まで完全に締まりますので結膜に溢血点は出ませんが、非定型の場合(足がついている)は溢血点が出ます。自絞死でも溢血点が出ます。首吊りは数え切れないくらい見ましたが、自絞死は初めてでした。