**第三の扉**(最終回)
とうとう「第三の扉」最終回になりました!!なんとなーく自分の頭に思い浮かんだ事 (要するに妄想…笑) を、形にしただけの代物でしたが、ここまで続けられたのも、いつも遊びに来てくださる皆様のおかげです。今まで読んでくださった皆様、、、本当にありがとうございましたあっ……念のため。苦情・不満は大歓迎です!!笑**第三の扉**(1)**第三の扉**(2)**第三の扉**(3)**第三の扉**(4)**第三の扉**(5)**第三の扉**(6)**第三の扉**(7)**第三の扉**(8)**第三の扉**(9)**第三の扉**(10)**第三の扉**(11)【エピローグ】村長になってからも、彼は相変わらず毎日のように、秘密の場所に通っていた。だが、今は一人ではない。太陽の光にキラキラと輝く銀色の髪。彼は愛おしげに、その小さな頭を見下ろした。その少年は、真剣な様子で薬草をじっと眺めては、紙にスケッチしている。周りの事に目もくれず、必死に手を動かしている様子はなんとも微笑ましかった。"放っておいたら、1日中でもこうしているだろうな…。" 彼は思わず苦笑いした。* * * * * * * * *遠くから、風に乗って自分達を呼びかける声が聞こえてきた。ふわりと、柑橘系の甘酸っぱい香りが鼻腔をくすぐる。彼の、大好きな香り。「アイルー!!!シオンー!!!」「あっ、やばい、母さんがきたぞ。」少年は、弾かれたように顔を上げ、パッと顔を輝かせる。二人は、急いでパンパンと土を払い立ち上がったが、栗色の髪の女性はすぐそこまで来ていた。「もうっ…、またこんな所に来ていたの?ご飯の度に呼びに来るの、大変なんだから。 なんでこんな場所が良いわけ?家の近くにも薬草は生えているでしょ?」リルは身を屈め、息子のふっくらとした頬についた泥を軽く擦る。アイルは、初めてできた息子に"シオン"という名を付けた。まだ小さな息子は、幼い頃のアイルと瓜二つで銀色の髪に藍色の目を持っていた。「お前だって、この場所好きだろー? この完璧な草むらがなければ、今頃シオンは存在しなかったかもしれないんだぞ?」夫のニヤリとした笑みを見て、リルはピンク色に頬を染めた。「もうっ…アイル!! パパは何言ってるんだろうねぇー、シオン君。……って、あら?」妻の不審そうな声を聞いて、その視線を追う。野生の薬草でいっぱいのはずのシオンのスケッチブックに、奇妙な絵が描かれていた。陽炎のように、ゆらゆらと波打っているような……これは扉だろうか。アイルは辺りを見回したが、むろん草原に扉などあろうはずもない。ドキリとした。この…扉は………。「シオン…?この扉は何を見て描いたんだ?」まだ小さな息子は、藍色の瞳に困惑したような表情を浮かべる。「分かんない……。このごろよく、夢の中でこのドアが見えるんだ。 さわれそうで手を伸ばすんだけど、すぐに消えちゃうの。 何だか、懐かしくて、悲しくて…。………よく分かんないや…。」シオンは、小さな手で柔らかそうな銀色の髪をふわりと耳にかける。その大人びた仕草を見て、アイルは何かが引っかかったような気がしたが、そのモヤモヤとした記憶の塊は、形を取るまえにあっという間に拡散していってしまった。「懐かしいって…あなた、懐かしがるほど生きてないじゃない」ケラケラと笑って、息子の桃色の頬を優しくつねる。「それより、昼ごはんが出来ているわよ。冷めちゃうから早く行きましょ」リルは草むらに散らばったクレヨンとスケッチブックを手に、元気良く立ち上がる。「そ、そうだな…。」アイルはよいしょっと息子を抱き上げると、小さな額にチュッとキスをする。シオンはくすぐったそうに身をよじり、天使のように愛らしい笑みを浮かべた。クリクリした藍色の瞳を覗き込んで心の中で言った。シオン、心から愛しているよ―。俺が、ずっとお前を守るからな。【END】