テーマ:ブログは文学たりえるのか(74)
カテゴリ:旅の記録
【つづき】
したらば件の彼女、束の間、頓狂なる風情でこちら を窺うも突然破顔一笑言うのである。 「見てたわけ~キャハハハハハ」 って具合で何故かそこから意気投合となったりした わけだが、何故か、ってくらいだからどの辺の意気 が噛み合ったり、どういう感じで共有感を覚えたり 意見思惑感想の合致をみたり、面白がったりしたの かは往時も現在も判然としないのだが、とにかくも ほとんど出逢いざまに意気投合。総勢四名となった 我々はクラッシック・プレイス201号室へと流れ込ん で深更まで談笑。笑い。笑顔。ってなんか笑ってば かりだが、事実笑ってばかりいたわけで、当夜何故 にそう容易くも場が華やぎ盛り上がったのか往時も 現在も判然としないのだが、ってこう書くとまるで 判然としないことばかりのようだが、事実判然とし ないのであれば判然としないことは判然としないま まで放置、時の過ぎ行くままに醸成しておくのが妥 当適切なる対処であろうと俺は断じるのである。 が、ま、しかし、やはり若く綺麗な御婦人を前にし て野郎どもがはしゃぐ、前のめりになる、笑いをと ろうとする、自己紹介をする、自己顕示欲の欲する ままになる、などの行動一覧は是道理なのであり、 俺も縞雄も善児も道理に実直であっただけのことな のだが、俺はその場で初めて『旅』に対する思いや 考えが各個人によってそれぞれであるという事を知 り、その事実が結構腑に落ちたり喫驚したりしたわ けである。 へ~、なるほどねぇ。みんな、それぞれに それぞれの理由で旅に出て、それぞれの旅 をしてるもんなんだ。ふ~ん、なるほどねぇ。 例えば縞雄は大学を出ても就職せず、東京の実家 にて余暇をもてあまし、もてあましたまま二年間の 時が漫然と過ぎ去れば、つまるところ、このままでは 僕は単なるニートに過ぎぬ。社会に積極的進出を図 らねば僕は社会人失格だ。それは嫌だ。大学を出て ぶらぶらしてるだけでは周囲の風当たりは強くなる ばかりではないか。正直やばい。母はともかく、昨今 では父は僕のことを座したまま腐りゆく奴、ぐらいに 見限ろうとしているかに思える。それは誤解というも のである。僕とて座したまま腐りたいわけではない のだ。ちゃんとした就職もしたくないわけではないし、 ちゃんとした結婚だってしたくないというわけではな く、僕はちゃんとすることだって実証しようと決めた。 うん。決めたのだ。 なればここは一念発起、社会進出を図るべく気持ち をば切り替えようではないか。 そうだ! 切り替えるには旅はうってつけではないか。うん。 そうだそうだ。そうしよう。大学二年の夏休みにパ ッケージツアーで訪れたタイランドへ今一度行って みようではないか。うん。そうだ。それがいい。で も今度はパッケージツアーではダメだ。時間が短す ぎる。であれば、大学の友人知人どもが就職先の 決った順に卒業旅行などと称してやっていたバック パッカーなんてのが宜しかろうや。うん決まり。タイ ランドの南、インド洋の碧きさざ波が打ち寄せたる 砂浜ビーチにて独りのんびりと、まったりと月間を 過ごさざれば気分気持ちを切り替える手掛かりとな らんや、なんて具合にして旅に出てきた男だったの である。 で、例えば善児の場合。ってあたりで【つづく】 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.03.24 07:41:31
コメント(0) | コメントを書く
[旅の記録] カテゴリの最新記事
|
|