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洋次郎を知っているか、と、さち子に問われて、浩一郎は飛び上がらんばかりに驚いた。
洋次郎というのは浩一郎の弟の名だ。 なぜ、さち子がそれを知っているのだろう。 さち子が浩一郎の身辺を調べたのだろうか? いや、それはない。ショッピングセンターで会ってから、そのような時間は経っていない。 すると、かおりからの電話は、さち子が掛けさせたのか? その時点からなら、浩一郎の身辺を調べる時間はあっただろう。 しかし、なんのために、見知らぬ男の身辺を調べたのか・・・ そう考えれば、さち子が身辺を調べたということはありえない。 洋次郎の名が出たのは単なる偶然であって、弟の名だと思うことが間違っているのだ。 だが、驚きを禁じ得ない。 一方のさち子は、「お父さんは、なぜ家に帰ってこないの」と言うかおりの話を止めさせたいばかりに、洋次郎の名を出したのだが、それは単なる思いつきの名前ではなかった。 さち子は、ショッピングモールの総合案内所で迷子になったかおりを抱いていた浩一郎を見た時から、似ていると思っていたからだ。 歳の程も、背丈も、似ている。 似ていると思うと、仕種や言葉遣いも似ているように思えてくる。 浩一郎は事故で急逝した夫に似ているのだ。 「洋次郎」は、夫の名だ。 (この超短編は、2008年12月31日から、大晦日と元日に書いています) 前回までの索引 その1.2 2008/12/31 2009/1/1 その3.4 2009/12/31 2010/1/1 その5.6 2010/12/31 2011/1/1 その7.8 2011/12/31 2012/1/1 その9.10 2012/12/31 2013/1/1 その11.12 2013/12/31 2014/1/1 その13.14 2014/12/31 2015/1/1 その15・16 2015/12/31 2016/1/1 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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