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2006.03.01
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ポプラの秋
湯本香樹実『ポプラの秋』
~新潮文庫~

 看護婦を辞めていた千秋のもとにかかってきた母からの電話。母とともに子どもの頃に住んでいた「ポプラ荘」の大家だったおばあさんが亡くなったとのことだった。
 小学一年生の頃、父の死により、母と二人で暮らすことになった千秋。母は、長いこと寝込んだ後、千秋を連れて電車でふらふらとあてもなく動き回った。その中で、「ポプラ荘」に出会い、二人は引っ越しした。庭の大きなポプラが、魅力的だった。
 大家のおばあさんは、幼い千秋にはこわい存在だった。父の死を受け、転校して、彼女は不安でいっぱいの生活をしていた。ついに熱を出し、体調を悪くした時期があった。その頃、母の仕事のあいだ、おばあさんのもとに預けられることになり、少しずつおばあさんと話すようになった。
 おばあさんの連れ合いは、もう亡くなっていた。遺影を見ながらの話から、おばあさんは、死んだ者は、天国にすでにいる死者に手紙を届けることができる、という話をしてくれた。反発も覚えた千秋だったが、それから、亡くなった父に手紙を書くようになった。父の思い出、日々のこと、知り合った男の子とのやりとり…。
 いろんな人から、亡くなった人への手紙を預かっているんだよ。そういうおばあさんに、千秋もたくさんの手紙を預けていくようになる。

 久々に電車に乗って用事にでかけたので、基本的には電車の中で読んだのですが、最後の方は、人のいるところで読んだらまずい(泣いてしまう…)と思い、自室で読了。
 手紙の力-というのでしょうか。最近は、メールという手段がメインになってきましたが、少し前までは手紙という手段がメインでしたし(これは個人的なものもありますが)、なんだか懐かしいような気分にもなりました。
 しんどいこと、辛いことを、とにかく文字にして、吐き出す。そしてそれを、本作のおばあさんは、受け取ってくれます。天国の名宛人に届けてあげると、約束をして。気難しいおばあさんですが、最後の方では(もちろん物語の中でも感じましたが)すごく素敵な人だなぁと思いました。かっこいいなぁって思います。
 話が話ですから、人の死について、それが周りの人にあたえる影響について、もちろん考えました。それでも、本作の中でいちばん印象に残ったのは、手紙のこと。
あまりに素敵な言葉があったので、引用します(文字色は反転させます)。
「手紙というのはやはり、郵便屋にしろ、海に浮かぶ瓶にしろ、何かに運ばれて行ってこそ、書いた者の心が本当に解き放たれるものなのだから」
 好みの物語でした。





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Last updated  2006.03.01 19:52:22
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