カテゴリ:本の感想(や・ら・わ行の作家)
横溝正史『吸血蛾』 ~角川文庫、1978年16版(1975年初版)~ 金田一耕助シリーズの長編です。 それでは、内容紹介と感想を。 ーーー 1955年(昭和30年)(?*)。某雑誌社の地下グリル、黒猫に一人の男がやって来た。男は、有名デザイナー浅茅文代の付き人に声をかける。男は、小さな箱を浅茅に渡してほしいと彼に手渡すと、名乗るかわりに、まるで狼のような鋭い犬歯を見せて去っていった…。 浅茅文代のモデルとなる7人、「虹の会」のメンバーと浅茅たちが雑談に興じているとき、浅茅はその箱の中身を見て驚愕する。 そして、最初の事件が起こる。ファッション・ショー当日の夜、急遽浅茅の代役をつとめたモデルが消えた。やがて、箱詰めにされた彼女の遺体が、浅茅たちの仕事場に届けられる。被害者は左の乳房が噛みきられたようになっており、その傷跡には血まみれの蛾がアクセサリーのように乗っているのだった…。 モデルたちの依頼を受けて金田一耕助も事件の調査に乗り出すが、狼男は凶悪な犯行を繰り返す。 *事件年代について注記。浅茅文代女史は1951-1953年までパリで学んでおり(167頁)、「一昨年の秋」は「パリから帰朝したばかりだった」という描写もあることから(9-10頁)1955年と推定されます。 ーーー 謎解き重視というよりも、怪人物が繰り返す凶行と、浅茅さんたちが抱える秘密の駆け引きなどのサスペンスの要素が強い作品です。方向としては『幽霊男』や『夜の黒豹』といったところなのですが、謎解き要素はいま例に挙げた二冊よりも薄いです。ただ、事件の派手さは際だっているように思います。すごいことするなぁと思う描写も…。そして被害者もかなり多いですし…。 …そんな物語でした。 *表紙画像は、横溝正史エンサイクロペディアさまからいただきました。 (2008/09/10読了)
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