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2009.03.05
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空蝉処女
横溝正史『空蝉処女』
~角川文庫、1983年~

 横溝さんの短編集です。解説の中島河太郎さんの言葉によれば、角川文庫(旧版)の横溝作品シリーズの最終刊ということになります。戦前の作品から戦後の作品まで、それまでの角川文庫未収録作品9編が収録されています。
 それでは、内容紹介と感想を。

ーーー
「空蝉処女(うつせみおとめ)」疎開先で、私は不思議な令嬢に出会う。月夜に散歩に出た私は、不思議な歌声を聞いた。それは、まるで夢うつつの中で歩いているような女性が歌っているのだった。彼女は、珠生という名前らしいが、戦争中に何らかの体験で記憶を失っており、名字も分からないという。彼女が身を寄せる家に若者が帰ってきて、若者は彼女に惹かれ始めるが、しかし一つ問題があった。未婚のように見える彼女であるが、しかし子供を持っていたような素振りも見せるのだった…。

「玩具店の殺人」戦前に工房で働いていた仲間たちで戦後作ったおもちゃ屋は、それなりに繁盛していた。ところが、そろばん担当ということで、仲間たちから疎まれていた人物が加わることになり、さらに事件が起こる。ある朝、おもちゃ屋で、女性が死亡していた。しかも、その片目はくりぬかれていた…。

「菊花大会事件」新聞記者の宇津木俊助は、自動車事故の現場に遭遇する。死者の服のポケットからは、暗号らしきものが書かれた菊花大会のチケットが出てきた。後日、俊助は、菊花大会で、同じくメモを見比べながら菊の花を見ている女性を発見する。

「三行広告事件」住宅を求める三行広告を出した後、同じ人物がその住宅を貸し出す三行広告を出す。しかも同じ事例が繰り返されている…。このことに興味をもつ由利先生と三津木俊助だが、その日彼らを訪れた依頼人が、彼らの前で死亡した。三行広告と男の死に関連があるらしい。由利先生たちは事件に挑む。

「頸飾り綺譚」事業のため、妻の首飾りを質に入れてしまった山名耕作。しばらくの間妻を欺くべく、偽の首飾りを作ったが、それが彼を苦しめることになる…。

「劉夫人の腕輪」神戸の中国人友達とともに、私は劉夫人を交えた食事に参加する。私は、彼女の腕輪がやけに気になっていたのだが、意外な事実が判明する。

「路傍の人」どことはなしに散歩をするのを日課にしていた私。ところが、どこに行っても同じ男に出会うようになる。「路傍の人」と心の中で呼ぶその男と、ある機会に意気投合する。すると男は、直感的な推理力で、いくつかの事件を事前に察知する。

「帰れるお類」とっても人の好い山野三五郎についての、涙なしには聞けないような素敵な逸話。

「いたずらな恋」私の友人で、ハンサムな磯部富郎が巻き込まれた不思議なエピソード。
ーーー

 枕元の友にして、前半は一日一編ずつというスローペースで読んだこともあり、その後感想を書くまでに時間が空いてしまったこともあり、後半は特にさらっとした紹介になりましたが、いずれも短い話なので、一気に読めると思います。
「菊花大会事件」「三行広告事件」は、つかみは面白いのですが、なんとも唐突な感じがありました。ですが、時局を思わせる作品です。
「帰れるお類」「いたずらな恋」は、ユーモア色もある作品。同時に、どちらもちょっと胸がちくりとするような感じもあります。
 表題作は、岡山県吉備郡に疎開していた「私」が主人公ということで、横溝さんご自身を連想せずにいられません。現在、倉敷市真備町となっていますが、ここに横溝さんの疎開宅があります(小規模ながら、横溝正史博物館も興味深いです)。以前、疎開宅や博物館に行き、周辺の横溝さんゆかりの地をまわったことがありますが(記事はこちら)、そのときに本作の舞台になっている大池にも行っています。というんで、本作は場所を思い浮かべながら興味深く読みました。
 本書のなかで一番面白く読んだのは「路傍の人」です。タイトルからも、面白いのが間違いないと思えてきますが、内容も素敵でした。

*表紙画像は、横溝正史エンサイクロペディアさまからいただきました。

(2009/03/01読了)





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Last updated  2009.03.14 07:17:49
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