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2009.03.28
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Jacques Voisenet, "Animalite et mepris du monde (Ve-XIe siecle)"
dans Jacques Berlioz et Marie Anne Polo de Beaulieu (dir), L'animal exemplaire au Moyen Age ― Ve - XVe siecle, Presses Universitaires de Rennes, 1999, pp. 29-40.


 今回は、ジャック・ベルリオズ/マリ・アンヌ・ポロ・ド・ボーリュー監修『中世の模範的動物―5世紀から15世紀―』所収の、ジャック・ヴォワズネ「獣性と世俗の軽蔑―5世紀から11世紀」を紹介します。
 まずは論文の構成を紹介した後、その構成にしたがって、感想も加えながら、全体的な内容紹介を書きたいと思います。
 本論の構成は以下のとおりです([ ]内はのぽねこによる補足)

ーーー
[序]
[第1節] 禁欲と、堕落の動物誌
[第2節] 聖なる虫
[第3節] 「小さな」虫
[第4節] 救済の翼
ーーー

 初期中世以来、修道士(修道的生活)は、世俗を離れ、世俗の富を蔑視し、天を目指して生活することを目標としました。この世俗(悪)と天(善)の対比には、動物のイメージもあてはまります。この論文では、その代表として、虫(地を這うもの)と、鳥(空を飛ぶもの)の二種類の動物に焦点が当てられます。

 第1節は、修道士たちの禁欲に対する態度を中心に見ながら、それに関係する動物たちについて論じます。
 世俗の生活(人生)は、つかの間の、はかないもので、クモが巣をはる行動のようなものだ、という考えがあったそうです。財産、名誉、性欲は拒むべきものとみなされました。財産については、物質的な豊かさは、結局は虫に食われてしまうよ、ということで、そのはかなさが強調されます。性の拒絶については、性の交わりなしに子どもを生むと考えられたハゲワシや、自然発生する(と考えられた)虫が、その模範となります。
 虫は、大食らいで、土を這っていることから、特に堕落と結びつけられましたが、しかし、その自然発生はマリアの処女懐胎の例証となっていると考えられたように、聖なる側面も持っていました。

 第2節は、その虫の聖なる側面について論じます。
 修道士は、謙遜という美徳を追求するため、あえて体を傷つけたり、みすぼらしい恰好をしたりしました。そこで、虫に服を喰わせたり、あるいは傷口を喰わせたりする聖人もいたという例もあります。
 また、第1節の部分でふれたように、その自然発生は、虫に誕生と再生というイメージを与えることになります。

 第3節では、虫という蔑視されるような存在に近づくことが、救済を求める者たちには不可欠だと考えられたという例が示されます。具体的には、アリとミツバチという二つの虫について、簡単に記されます(それぞれ1段落)。
 たとえば、アリは、財産を共有し、共同で働きますが、これは修道院で財産を共有し、共同で働く修道士になぞらえられます。

 最後に第4節は、翼や羽の象徴性について論じます。第3節の最後にふれられるミツバチが羽をもつことから、ここに話が発展しています。
 具体的に取り上げられる動物(鳥)は、ワシとハトです。ワシは、その急上昇が天に近づくこと、つまり善を象徴しますが、急降下することが世俗的生活への接近ということで悪くとらえられるという、二重のイメージをもっていました。ハトは霊的生活の象徴で、たとえばアルルのカエサリウスという人物は、禁欲や施しによって世俗財産から解放された人々は「霊的なハト」になる、と言っているようです。
 特にこの節で強調されているのは、羽が遠心的運動と上昇的運動の二つを同時に示す、ということです。遠心的運動というのは、世俗や罪から離れていくことを示し、上昇的運動は、そのまま天の救済に上っていくことを示します。


 このように、この論文は、聖人伝や修道院の戒律(会則)を主要な史料としながら、修道士たちが追い求めた、禁欲と世俗の蔑視を中心とする修道的生き方と、動物との関連を示しています。
 短い論文ということもあってか、あまり強いインパクトはありませんが、あえて挙げるならば、羽がもつ二重の象徴性(遠心的運動、上昇的運動)がこの中では強調されていて(第4節の中で、二度書かれています)、興味深かったです。

(2009/03/24読了)





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Last updated  2009.03.28 07:17:11
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