カテゴリ:本の感想(海外の作家)
アナトール・フランス(三好達治訳)『少年少女』
~岩波文庫、1988年43刷(1937年1刷、1972年22刷改版)~ (Anatole France, Nos enfants, 1886) アナトール・フランス(Anatole France, 1844-1924)が子供たちを描いた、19編の短編(ショート・ショート)が収録されています。 どれもとても短い話なので、全体のタイトルだけを紹介した上で、興味深かった話についてのコメントや全体の印象を書いてみたいと思います。 ーーー ファンション 仮装舞踏会 学校 マリ 牧羊神(パン)の笛 ロジェの厩 勇気 カトリーヌのお客日 海の子 回復期 野あそび 観兵式 落ち葉 シュザンヌ 魚釣り 大きな子供たちの失敗 ままごと 芸術家 ジャクリーヌとミロー ーーー 冒頭におかれた「ファンション」は、本書の中でも最も長い物語です(それでも13ページ)。おばあちゃんのおうちに遊びに行ったファンションが、庭でパンを食べていると、たくさんの小鳥たちがやって来ました。小鳥たちは、パンを欲しがっているようでした。そのかわりに、彼らはきれいな歌を歌ってくれます。ファンションは、小鳥たちみんなにパンを分け与えようとするのですが、大胆なものたちやパン屑をとるのが得意な一部のものたちばかりがパンを取ってしまい、どうにもみんなに行き渡らないのでした…。 このように、現実はちっとも理想の形ばかりでは進まないということを描いた話が多いです。とまれ、「ファンション」については、このシーンだけでなく、なによりラストが素敵です。こういう物語を読むと、綺麗だなぁと思います。 子供たちが、仕事として落ち葉を集めに行く「落ち葉」という話も、印象的でした。落ち葉拾いを終えた子供たちを待っている、温かなスープとパン。とても素朴で、とても綺麗ですね。 「芸術家」という一編も良かったです。今はまだ子供で、決して絵が上手なわけではないですが、毎日のように絵を描く一人の少年を描いた物語です。 上にもちょっと書きましたが、多くの話が、特に寓意で包むわけでもなく、かなりストレートに現実のことを描いています。また、教訓もストレートに示される話もあります。例として、「学校」のラストを、文字色を反転して引用しておきます。 「いい点数は何の役にたつの、ね、お母さん?」 「いい点数は、何かの役にたつというような、そんなものではありません。しかしそれだから、いい点数をもらったことを喜ばなければなりません。お前も今に、一番貴いご褒美は、ただ名誉だけが与えられて、それから受ける利益はない、そんなご褒美だということがわかるようになるでしょう。」 2ページだけの短い話が多いということもあり、枕元に友に選んでみました。本自体も100ページほどで、あっという間に読めます。こういう物語も、大切にしていきたいと思います。 (2009/04/03読了)
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