カテゴリ:本の感想(あ行の作家)
歌野晶午『放浪探偵と七つの殺人』 ~講談社文庫、2002年~ 歌野さんの初期のシリーズで活躍する信濃譲二さんが探偵役をつとめる短編集です。7編の短編が収録されています。 それでは、それぞれについて簡単な内容紹介と感想を。 ーーー 「ドア⇔ドア」倒叙もの。被害者の部屋と自分の部屋のドアを交換した男は、なぜ信濃譲二に犯罪を見抜かれるのか。 「幽霊病棟」死体消失。犯人が殺した女の死体は、なぜ隠したはずの部屋から消えていたのか。 「烏勧請」玄関先にゴミをためていた家の女が死んだ。彼女はなぜゴミをためていたのか。 「有罪としての不在」犯人あて。学生寮で起こった殺人事件。アリバイがあやふやな人物ばかりのなか、犯人は誰なのか。 「水難の夜」マンションにピザを届けた男が見つけた女の死体。犯人は、女とともに倒れていた男なのか。 「W=mgh」墓地で見つかった女の死亡推定時刻よりもずっと後の深夜に、彼女が奇妙なかっこうで走っているのを見たという職場の先輩とともに、信濃譲二はその解明に乗り出す。 「阿闍梨天空死譚」宗教団体が崇める塔の上部に、全裸の男がしばりつけられて死んでいた。しかも男の死因は餓死。男はなぜ空高い場所で死んでいたのか。 ーーー 「有罪としての不在」には読者への挑戦も付されていて、解決編(というよりも解答編というべきか)はとても丁寧な解説になっています。真っ向勝負の犯人当てミステリでありながら、しかも一ひねりあるあたり、さすがです。 「W=mgh」や「阿闍梨天空死譚」は、それこそ島田荘司さんばりの大きな謎の提示にはじまり論理的な解決にいたる、という感じで、本書に収録された作品はどれもオーソドックスにして洗練された本格ミステリとなっています。 (2009/06/28読了)
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