カテゴリ:本の感想(あ行の作家)
秋月涼介『紅玉の火蜥蜴』 ~講談社ノベルス、2004年~ 秋月さんの第3作で、デビュー作『月長石の魔犬』に続く風桜青紫シリーズ第2弾です。 それでは、内容紹介と感想を。 ーーー 火に魅せられた「私」は、この街を火で浄化することを決意する。 * 犬首事件と時を同じくして起こっていた連続放火事件のなかでも、奇妙な殺人事件が起こっていた。手足を縛られ、生きたまま焼き殺された寺の住職の遺体が、女性のものだったのだ。 事件に興味をもった鴻薙冴葉警視は、梅崎に補佐されながら、また犬首事件で知り合った風桜青紫の助力を求めながら、捜査にあたっていく(あるいは、捜査をかき乱す)。 過去の火災現場で、少年を見殺しにした消防士。母親が焼死していく状況を目にした人々。そして、事件関係者の人々がもつ、事件の中で殺害された金融業者との関わり…。 繰り返される連続放火と殺人事件に、冴葉のみならず、外科医の嘉神も自らの関心から関わっていき…。ーーー 第1作に比べ分量もありますが、その分内容も濃いものとなっています。 章ごとに視点が変わるのですが、それぞれの立場や心情、過去のしがらみが割合丁寧に描かれていて、狭義のミステリにとらわれない、物語としても楽しめました。 特に、消防士の柏木さんと神崎さんが描かれたパートが面白かったです。最後に二人が活躍する章ではぞくぞくしました。 一点、気になった点もあります。ちょっと文字色反転。 <ここから>それは、遊佐警部補と梅崎さんの対決(?)のシーンが物語の中で果たしている役割が、結局あいまいになってしまっているように思われることです。あの章は、単にサスペンスフルな雰囲気を加えるだけの役割だったのでしょうか。それとも、今後のシリーズの伏線として生きてくるのでしょうか。後者なら今後に期待ですが、そうでなければ、その部分も真相解明の中に読み込まれていれば良かったのでは、と思いました<ここまで>。 風桜さんが語る寓話(今回は怪談ですが)も、お約束のような場面でありながら、このシリーズでの楽しみな一幕です。 楽しみといえば、今回も居酒屋のシーンでおなかが空いてきてしまいました(笑) シリーズになれてきたこともあるのか、第1作よりも味わいながら読めました。 (2009/10/10読了)
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Last updated
2009.10.12 07:02:45
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