カテゴリ:本の感想(あ行の作家)
石崎幸二『≠の殺人』 ~講談社ノベルス、2009年~ サラリーマンの石崎幸二さん、お嬢様学校・桜欄女子学院高校のミリアさん&ユリさんが活躍するシリーズの最新作です。 それでは、内容紹介と感想を。 ーーー 桜欄女子学院高校ミステリィ研究会の深月仁美は、ミリアたちに衝撃ニュースをもたらした。彼女の親の会社と関係のあるヒラモリ電器の関係者、平森由香里という女性から、石崎幸二も含めてクリスマスパーティーに招待するという案内状が届いたのだった。 そして今回も、石崎たちは島へ向かい、事件に巻き込まれてしまう。 今回の滞在先、ヒラモリ電器研修館は、3つの塔をもつ立派な建物だった。主人は、石崎の友人でヒラモリ電器専務の平森栄一。その双子の妹、美冬と美雪のために、同じものが二つずつある共有部屋が中央塔に、そっくり同じの作りの部屋が東塔と西塔にそれぞれあって、二人は一日おきに東塔と西塔の部屋を交換しているという。それは、平森家が二人の姉妹に対して、歪なまでに「平等」に接しようとした結果だった…。 客は、石崎たち4人に加え、野球選手に俳優がやって来ていた。 そして、石崎たちが到着した、パーティの前夜に、事件は起こる。野球選手が、双子の共有部屋で殺された。その左目はつぶされ、左胸あたりはえぐられ、左手首、左足の指が切断されていた。そして、二つずつあるものの片側のみが、いくつかなくなっていた。 石崎たちが警戒するなか、逃亡した強盗犯を追っていた斎藤瞳刑事が、館を訪れる。 そんな中、さらに事件は起こり…。 ーーー 今回も前作『復讐者の棺』と同じような、重たい雰囲気がありますね。シリーズ外作品『首鳴き鬼の島』以降、石崎&ミリア&ユリシリーズも、初期の作風から変化してきているように感じます。 このシリーズは、なんといっても、石崎さんとミリアさん、ユリさんが事件の疑問点を列挙し、それぞれに仮説を与えていく過程が魅力です。好みの問題ですが、私は何人かが事件の真相(と思っているもの)を披露して、その後探偵が本当の真相(というもの変な日本語ですが)を明かすという、どんでん返しものはあまり好きではありません。まだページが残っているのに、探偵ではない登場人物の一人が得意げに推理を語っていても、結局偽の真相なんだよなぁ、と、流し読みしてしまいがちです。 ところがこのシリーズでは、もちろんいくつかの仮説は列挙されるものの、それが疑問点を整理しながらのことなので、読みやすいのです。疑問点を列挙し、いろんな仮説を出していくところに、研究を進める過程と同じ魅力を感じるからかもしれません。 このシリーズのもう一つの魅力のおやじギャグの方は…。やっぱり、『首鳴き鬼の島』以前の作品よりは、徹底的に笑いを狙ったシーンは減ってきた感じです。ボケの難易度も高くなっているような…? でも、ゴシック体での空想ミステリがあったり、石崎さんがタイトルだけ作った事件のことで想像をふくらませるシーンがあったりで、楽しめました。がちゃぴんにはかなり笑わされました。 なにはともあれ、楽しく読めた一冊です。 (2009/12/13読了)
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