カテゴリ:本の感想(さ行の作家)
島田荘司『奇想の源流―島田荘司対談集―』 ~光文社文庫、2002年~ ミステリ、日本人論などのテーマについての、島田荘司さんの対談集です。 本書の構成は次のとおりです(カッコ内は対談相手)。 ーーー まえがき 第一章 探偵小説論 ・ミステリーのコードを破壊せよ(笠井潔) ・騙されるより騙したい(座談会)(綾辻行人、井上夢人、歌野晶午、笠井潔) ・島田ワールドの原点(新保博久) ・黄金時代の遺産を継ぐ(鮎川哲也) 第二章 日本人論 ・江戸の知恵に学ぶ(石川英輔) ・ピラミッドが大好き(吉村作治) ・脳が造った国・日本(養老孟司) 第三章 自動車論 ・90年代の自動車を俯瞰する(岡崎宏司) ・ハードウェアの完成度は極めたが、日本のスポーツカーに欠けるもの ・日本車における思想性 ・運転の本質を考える ・21世紀のスポーツカーを思う 第四章 社会論 ・人権・報道・死刑廃止(浅野健一) 対談・その後 あとがき 島田荘司全著作一覧(新保博久編) ーーー 第一章と第四章が特に面白かったです。 第一章の座談会では、井上夢人さんが、「本格」という言葉にこだわらなくても良いのでは、「本格」という言葉が思い入れなのかジャンルなのかがはっきりしない、という議論をされているのが面白かったです。 こうした議論では、島田さんの論旨があまりすっと入ってこない印象があるのですが(綾辻さんとの対談『本格ミステリー館』でも感じました)、しかし、島田荘司さんはまさに自身の論理に則って作品を発表していますし、その力強さ・面白さは、やはり圧倒的だと思います。 また、歌野晶午さんが、ミステリーとして扱われてはいない作品でも、謎解きのカタルシスが味わえる作品はミステリーだと感じるといわれているのも、面白かったです。逆に謎解き部分でカタルシスがなければ、探偵が出てこようが、ミステリーとは感じない、と。 このあたりの思いが、『ジェシカが駆け抜けた七年間について』などの作品にあるのだろうなぁと感じて、あらためて興味深く思いました。 第四章は社会論とありますが、日本人論・死刑論が中心的に扱われています。 被害者感情を考えて死刑に賛成だ、という議論については、2点の反論がなされます。 ひとつは、自身の家族が殺されたにもかかわらず、死刑反対運動をしている方の存在。 もうひとつは、「あなたの最愛の人が他人を殺したとき、殺さねばならない理由がその時にはあった。それでも死刑になったときでも死刑を許しますか」という反論です。 興味深く読みました。 ずっと探していた本なので、見つけたときはとても嬉しかったです。 第三章は割とながし読みになってしまいましたが、全体として、わりあい面白かったです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.08.04 21:58:33
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