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2009.05.14
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歌野晶午『ジェシカが駆け抜けた七年間について』
~角川文庫、2008年~

 時系列でいえば、『葉桜の季節に君を想うということ』に続く、歌野さんの長編ミステリです。

 物語の舞台は、アメリカはニューメキシコ州の都市、アルバカーキ。日本人ツトム・カナザワがカントクをつとめる長距離専門の陸上競技クラブ、NMAC(ニューメキシコ・アスリート・クラブ)に所属するジェシカが主人公です。
 ジェシカは、エチオピア出身の22歳。NMACには多くの国籍のアスリートたちが属していますが、中には、日本人もいました。アユミ・ハラダというその女性をジェシカは友人として気に掛けていましたが、ある夜、アユミの奇妙な行動を目撃します。寝付けなくなったジェシカが散歩をしていると、アユミが不思議なかっこうをして、木に何かを打ちつけているのでした。後日、それが日本の丑の刻参りという、人を呪う儀式だということを知ります。
 そしてジェシカは、アユミから衝撃的な告白を聞かされるのでした。

 いわゆるミステリとしての事件は、物語の後半になってやっと起きます。が、それでも「本格ミステリ」としての驚きが味わえます。
 本書についてはまず、千街晶久さんによる解説について言及しておくのが良いかと思います。
 そこで千街さんは、歌野さんの次のような思いを紹介しています。(文字色反転)「本格はトリックが最優先事項で、ストーリーや文章は二の次でも構わないという本格観に甘えている自分への危機感があったという。ちゃんとした小説を書いた上で本格もプラスするのでなければ、今後作家としてやっていく上で駄目になってしまうのではないか、という危機感が―」(ここまで)
 そして歌野さんは、本格から離れつつ、本格の要素を追求しておられる、といいます。『葉桜の季節に君を想うということ』もそうですし、本作もまさにそうです。
 冒頭での魅力的な謎の提示、序盤からの容疑者たちの登場―といった、本格物のお約束はここではありません。単に、ジェシカやアユミたち、女子長距離選手たちの葛藤や悲劇を描いた作品として楽しめる作品です。そして、いわゆる本格ミステリのような驚きも味わえます。
 素敵な読書体験でした。
 しばらく読んでいなかった歌野さんの作品を再読し、またこうして開拓し始めて、本当に良かったと思います。

(2009/05/05読了)





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Last updated  2009.05.14 06:38:17
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