カテゴリ:本の感想(あ行の作家)
有栖川有栖『江神二郎の洞察』 ~東京創元社、2012年~ 学生アリスシリーズ初の短編集です。9編の短編が収録されています。 それでは、簡単にそれぞれの内容紹介と感想を。 ーーー 「瑠璃荘事件」望月が住むアパート「瑠璃荘」で、住人のノートが何者かに持ち去られる出来事があった。時間的に、持ち去れたのは望月だと言われるが…。 「ハードロック・ラバーズ・オンリー」大音量のロックが流されるカフェで、アリスが知り合った名も知らぬ女性。道でたまたま見かけた彼女に、アリスは声をかけるが…。 「やけた線路の上の死体」和歌山にある望月の実家に訪れた推理小説研究会のメンバーは、望月の知人の新聞記者が語る、列車の人身事故に興味をもつ。単なる事故ではなく、他殺と思われるという。動機をもつ人物たちは、その日、被害者の家を訪れたというが…。 「桜川のオフィーリア」江神の友人で推理小説研究会を立ち上げた石黒が持ってきた数枚の写真。そこに写されていたのは、石黒が高校生の頃にその友人が撮った、同級生の女性の死体だった。はたして、撮影者は犯人だったのか。 「四分間では短すぎる」アリスが公衆電話で話しているとき、横の男が話していた、「四分間では短すぎる」という謎の言葉の意味を、推理小説研究会のメンバーが推理していく。 「開かずの間の怪」怪談話がささやかれる病院跡地で、怪談の謎に迫るた推理小説研究会のメンバーたち。アリスたちが見た人形は、いかに開かずの間に消えたのか。 「二十世紀的誘拐」織田・望月のゼミの教師の家から、その親族の絵が盗まれた。その絵の身代金は、千円。メンバーたちが犯人の指示のままに行動すると、絵は無事だった。盗んだ時の犯人は手ぶらだったはずなのに、折り目すらない状態で…。 「除夜を歩く」望月が書いた犯人当てミステリに、アリスが挑む。さらに江神は、その物語に、ミステリがもつ大きな問題が含まれていると指摘する。 「蕩尽に関する一考察」急に大盤振る舞いをはじめるなど、異常なくらいにお金を使い始めた古本屋の店主。はたして、彼はなんのために大盤振る舞いをしているのか。 ーーー 大学生になったアリスが推理小説研究会に入ってから、マリアが同じく研究会に入るまでの時期を描いた短編集です。「やけた線路の上の死体」「桜川のオフィーリア」では、人の死が描かれますが、その他の物語はいわば日常の謎を扱っています。有栖川さんの作品ではあまり日常の謎ものはないですが、とても面白かったです。「ハードロック・ラバーズ・オンリー」「四分間では短すぎる」「蕩尽に関する一考察」は、特に楽しめました。 「四分間では短すぎる」は、有栖川版「9マイルでは遠すぎる」のようですが、私は「9マイルでは遠すぎる」を読んだことがないので、あらためて気になりました。 面白かったです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013.02.23 11:13:18
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