カテゴリ:本の感想(ま行の作家)
~創元推理文庫、2003年~
松尾由美さんのデビュー作です。5編の短編が収録された短編集です。 舞台は、未来の日本。人工子宮の利用が普通になり、自ら出産することを選ぶ女性が少ない中で、それでも自分で産むことを選んだ妊婦たちが住む東京都第七特別区、通称バルーン・タウンで暮らす翻訳家・暮林美央さんが探偵役をつとめます。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。
――― 「バルーン・タウンの殺人」バルーン・タウンのスイミング・クラブでコーチを務めていた男が、妊婦に殺された。目撃者はいたが、誰も妊婦の顔をしっかり見ておらず、警察コンピュータでも犯人特定は困難とされた。江田茉莉菜刑事は、バルーン・タウンに偽妊婦として潜入し、先輩の暮林美央の助言を得ながら、捜査を進めることとなる。 「バルーン・タウンの密室」バルーン・タウンで開催される妊婦のコンテストの直前、表敬訪問を行う予定の市長に脅迫状が届けられた。それでも町を訪れた市長だが、コンテスト再開まで休憩をとっている中、何者かに頭を殴打されていた。現場は、ある種の密室状況だった。警察のコンピュータ「ドウエル教授」と暮林美央の知恵比べが始まる。 「亀腹同盟」暮林美央のもとに、画材店店長をつとめる妊婦、大橋有佳が相談を持ちかけていたところに、江田茉莉菜刑事も居合わせる。大橋は、まるでシャーロック・ホームズの「赤髪連盟」そっくりの状況に巻き込まれているというのだった。 「なぜ、助産婦に頼まなかったのか?」江田茉莉菜が歩いていると、一人の紳士が突然倒れ、死亡した。紳士は死の直前、「なぜ、助産婦に頼まなかったのか?」という奇妙な言葉を残していた。病死なのか、他殺なのか。再びバルーン・タウンで捜査を進める茉莉菜は、外国の要人も関係する大きな背景があることを突き止めていく。 「バルーン・タウンの裏窓」暮林美央の活躍をタウン誌に発表していた有明夏乃は、ある夜、向かいのアパートで、きれいな亀腹の妊婦が歩いているシルエットを目撃する。それは、失踪していた有名女優そっくりのシルエットで…。 ―――
購入からなかなか読めていませんでしたが、これは面白かったです。妊婦が基本存在しない世界で、妊婦だけの町がある、というこの物語(の表題作)は、もともとハヤカワ・SFコンテストに入選した作品ということです。が、謎解きの妙も面白く、創元推理文庫から刊行されているだけあって、ミステリとしても上質の作品だと思います。 ドウエル教授を操作する男性刑事さんが楽しいキャラでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2019.01.23 21:45:52
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