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2019.05.03
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エインハルドゥス/ノトケルス(國原吉之助訳)『カロルス大帝伝』

~筑摩書房、1988年~

 

 訳者の國原吉之助先生は、カエサル『ガリア戦記』やスエトニウス『ローマ皇帝伝』などの訳者として有名です。本書刊行当時は、名古屋大学文学部教授でいらしたようです。

 カール大帝について、実際に彼に仕えたエインハルドゥス(アインハルト)と、大帝の死後に生まれたノトケルス(ノトカー)が残した伝記の邦訳です。

 本書の構成は次のとおりです。なお、各著作の題目や内容目次は原典にはなく、訳者の國原先生によるものです。

 

―――

エインハルドゥス『カロルス大帝伝』

 第1部 カロリンギ朝の起り

 第2部 カロルス大帝の外征と内政

 第3部 カロルス大帝の私生活と肖像

 第4部 カロルス大帝の晩年と死

附録 『カロルス大帝伝』へのヴァラフリド・ストラボの序言

 注

 

ノトケルス『カロルス大帝業績録』

 第1巻 敬虔なカロルスと教会

  ・聖俗の学問と教育 ・カロルスと聖職者

・聖職者と悪魔 ・カロルスと教皇

・聖俗の建築物建立 ・雑記

 第2巻 英邁勇敢なるカロルスの外交と戦争

  ・外敵との戦争 ・ビザンティウム帝国やその他との交流

  ・フルドヴィクス(ドイツ王) ・ノルドマンニ人その他との戦い

  ・フルドヴィクス(敬虔王)

 注

 

解題

あとがき

年表

カロリンギ朝系図

地図

地名・民族名の中世ラテン語―現代語訳表記対照表

人名索引

―――

 

 巻末の解題が分かりやすいのはもちろん、「地名・民族名の中世ラテン語―現代語訳表記対照表」や「人名索引」も付されているように、とても丁寧に作られている一冊です。


 カロリング朝の王であり、800年のクリスマスに教皇レオ3世から戴冠されるカール大帝(フランス語でシャルルマーニュ)について、同時代人の残した伝記ということで、有名な史料ですが、読んだのは今回が初めてになります。


 まず、アインハルト『カール大帝伝』についてメモ。


 面白かったのは、カール大帝は教皇レオからの皇帝の称号の受取を最初は固辞していた、という記述です。アインハルトは、カール大帝が次のように言ったといいます。「あの日がたとい大祝日であったとしても、もし教皇の意図をあらかじめ推察できていたら、あの教会にのこのこ踏み込んだりはしなかったろう」(38)。東ローマ帝国の皇帝による嫉妬を危惧していた、というのですね。


 その他、息子や娘の死の際には涙を流したり、ローマ教皇ハドリアヌスの訃報に接したときも悲泣したりと、大帝の感情的な面が描かれていたり(30)、娘たちを愛していたため誰のもとにも嫁にやろうとしなかったり(31)と、彼の人となりにふれられます。また、自分になじんでいた焼いた肉をやめてゆで肉を常食とするよう説得されたために、医者をほとんど敵視していたといった記述など、楽しい記述もあります。


 ノトケルスの『カール大帝業績録』は、強欲な聖職者の顛末など、カール大帝のこと以外についてもいろいろと余談が多く、エピソードとしては面白い話も多いですが、構成はアインハルトの作品の方がすっきりしていて読みやすいです。(そのあたりの作品の性質については、解題にも詳しいです。)


 私が専門に勉強している時代とは異なる時代ですが、有名な史料にふれることができて良かったです。先に書いたとおり、とても丁寧な作りが嬉しい一冊です。

 

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Last updated  2019.05.03 22:24:10
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