ヤコブス・デ・ウォラギネ(前田敬作・今村孝訳)『黄金伝説1』
~人文書院、1979年~
13世紀に編纂された、聖人伝の集大成です。
著者のヤコブス・デ・ウォラギネ(1230頃~1298)は、説教を中心に行うドミニコ会に属し、ジェノヴァ大司教もつとめました。『黄金伝説』のほか、『ジェノヴァ市年代記』や説教集などの著作があります。
本書の構成は次のとおりです。(カッコ内に、訳注を参考に該当の祝日や当該聖人の生没年などをメモ)
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序章
1 主の降臨と再臨[待降節、現行では11/27~12/3にはじまる]
2 使徒聖アンデレ[祝11/30、X型十字架]
3 聖ニコラウス[祝12/6、4世紀前半]
4 聖女ルキア(ルチア)[祝12/13、304年没]
5 使徒聖トマス[祝12/21、インドに布教しそこで殉教したと言われる]
6 主のご降誕[12/25]
7 聖女アナスタシア[祝12/25、304年頃殉教]
8 聖ステパノ[祝12/26、キリスト教最初の殉教者]
9 福音史家聖ヨハネ[祝12/27]
10 罪なき聖嬰児ら[祝12/28、ヘロデ大王の命令で殺された男の子たち]
11 カンタベリーの聖トマス[祝12/29、1118-1170]
12 聖シルウェステル[祝12/31、第33代教皇、位314-335]
13 主のご割礼[祝1/1]
14 主のご公現[祝1/6、東方三博士来拝の日]
15 初代隠修士聖パウロス[祝1/15or1/10、228-342頃]
16 聖レミギウス[祝1/13、440頃-534]
17 聖ヒラリウス[祝1/14、315頃-367]
18 聖マカリオス[祝1/15、300頃-380/390頃]
19 ピンキスの聖フェリクス[祝1/14]
20 聖マルケルス[祝1/16、第30代教皇、位308-309]
21 聖アントニオス[祝1/17、251頃-356]
22 聖ファビアヌス[祝1/20、第20代教皇、位236-250]
23 聖セバスティアヌス[祝1/20、3世紀後半]
24 聖女アグネス[祝1/21・1/28、3世紀末or4世紀初殉教]
25 聖ウィンケンティウス[祝1/22、304年殉教、スペイン人最初の殉教者]
26 司教聖バシレイオス[祝6/14(東方では1/1)、370年頃活躍]
27 慈善家聖ヨハネス[祝1/23、610頃-619アレクサンドリア総大司教]
28 聖パウロの回心[祝1/25、パウロがキリスト教迫害者から伝道者へ転身]
29 聖女パウラ[祝1/26、347-404]
30 聖ユリアヌス[全5人のユリアヌスに言及。祝1/27ほか]
31 七旬節[その主日は復活祭から9週間前の日曜日]
32 六旬節
33 五旬節
34 四旬節[灰の水曜日から復活祭の前日までの6週間半]
35 四季の斎日[春は四旬節第一主日、夏は聖霊降臨の大祝日、秋は9/14、冬は12/13の各直後の水、金、土曜日]
36 聖イグナティオス[祝2/1、117以前没]
37 聖母マリアお潔め[祝2/2、聖燭祭とも。主の降誕後40日目に聖母マリアが神殿に行って潔めの儀式を受けたことに由来]
38 聖ブラシオス[祝2/3、3世紀末頃or4世紀初頃殉教]
39 聖女アガタ[祝2/5、250年頃殉教]
40 聖ウェダストゥス[祝2/6、540年没]
41 聖アマンドゥス[祝2/6、679or684没]
42 聖ウァレンティヌス[祝2/14]
43 聖女ユリアナ[祝2/16、4世紀初頭殉教]
44 聖ペテロの教座制定[祝2/22・1/18]
45 使徒聖マッテヤ[祝2/24、ユダの裏切りにより欠員が生じた十二使徒に、主の昇天後くじで選ばれた]
46 聖グレゴリウス[祝3/12、第64代教皇、位590-604]
47 聖ロンギヌス[祝3/15、現在では聖列に入っていない]
48 聖ベネディクトゥス[祝3/21、480頃-547]
49 聖パトリキウス[祝3/17、385頃-461頃]
50 主のお告げ[祝3/25、大天使ガブリエルによる受胎告知の日]
51 主のご受難[四旬節の第五主日]
解説
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構成だけで53行使ったので簡単にメモ。
訳注が充実し、解説でヤコブスの経歴や主著、本書の意義も論じられているなど、非常に便利。
訳文も読みやすいです。(「すたこらさっさ」とか「桑原桑原」という訳文が印象的。)
本論は、聖人についてはその名前の意味を解き明かすところから始まり、その経歴を紹介したり、その聖人が行った主な奇跡を紹介したりといった構成。ある言葉や出来事の複数の意味を論じるあたり、説教と同様の構成と持っています。
序章での、期節の区分についてメモ。(カッコ内の丸数字は教会歴の順番)
・迷いの生活の時代=アダムの原罪~モーセの時代=七旬節~復活祭(④)
・呼び戻しの時代=モーセ~主のご降誕=待降節~降誕祭(①)
・贖罪の時代=キリストの誕生~死=復活祭~聖霊降臨(⑤)
・巡礼の時代=現代の人間の時代=聖霊降臨~待降節(⑥)
・贖罪の時代(2)=降誕祭~ご公現の祝日の8日後まで(②)
・巡礼の時代(2)=ご公現の祝日の8日後~七旬節(③)
時代の名前の当て方が、私が勉強を進めているジャック・ド・ヴィトリと同様で、ジャックは迷いの時代(待降節~七旬節)、呼び戻しの時代(七旬節~復活祭)、回復の時代(復活祭~聖霊降臨)、巡礼の時代(聖霊降臨~待降節)と、期節の区分はやや異なるものの、その類似性が気づきになりました。(参考:Lecoy, pp.272-273)
全4巻中、とりあえず第1巻を読みました。第2巻以降も徐々に読んでいこうと思います。(少し先送り中)
(2021.11.10読了)
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