コナン・ドイル(阿部知二訳)『恐怖の谷』
~創元推理文庫、1960年~
(Arthur Conan Doyle, The Valley of Fear, 1915)
シャーロック・ホームズシリーズの第4長編にして、長編としては最終作品。
『緋色の研究』『四人の署名』同様、2部構成になっており、第1部はホームズがかかわる現代の事件、第2部はその事件の背景となった物語です。
それでは、簡単に内容紹介と感想を。
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ホームズのもとに届いた奇妙な暗号を解読していたところ、マクドナルド警部が訪れる。警部は、ホームズたちのメモをみて驚く。メモにあった名前の人物が、殺人事件の被害者となっていたからだった。
現場は、濠に囲まれた邸宅。跳ね橋が上げられる前に犯人は侵入し、濠を渡って逃げたと思われたが、被害者は銃で顔をめちゃくちゃにつぶされており、凄惨な状況だった。被害者の腕には、奇妙な焼き印があったほか、指には結婚指輪が付けられていなかった。
ホームズがたどり着く真相とは。
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ある渓谷では、「大自由人団」の性格が異なっていて、「天誅団」と呼ばれ、人々から恐れられていた。シカゴの「大自由人団」からこの地を訪れたマックマードは、しかし誰をも恐れない性格から、天誅団の団長マッギンティにも気に入られ、ついに組織の中で重要な位置を占めるに至る。しかし、ついに人々が結束して、天誅団の壊滅を目指し始め…。
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いわば陸の孤島のような状況で起こった第一部は、顔のない遺体、奇妙な焼き印、なくなったアレイと、興味深い道具立てがそろっていて、それ自体楽しいのですが、個人的には第二部をわくわくしながら読みました。マックマードが恋人と一時的に離れ、一方組織の中で一部の人たちとはいさかいを起こしながらも尽力していく過程は手に汗握ります。そして単なる冒険ものと思いきやミステリとしての仕掛けも秀逸で、楽しく読みました。
小学生くらいの頃にホームズものはいくつか短編を読んできていますが、長編を読んだことはありませんでした。長編4作は最近読んだばかりですが、どれも面白かったです。
(2022.04.19読了)
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