アガサ・クリスティ(長沼弘毅訳)『オリエント急行の殺人』
~創元推理文庫、2003年新版~
(Agatha Christie, Murder on the Orient Express (Murder in the Calais Coach), 1934)
エルキュール・ポワロが活躍する有名な長編ミステリーです。
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ポワロが急遽乗ることになったオリエント急行には、様々な国籍の男女が乗っていた。ポワロが嫌な印象を抱いた男―ラチェットは、ポワロに、自分が何者かに狙われていると、調査を依頼するも、ポワロは依頼を断る。
その後、大雪で電車が止まってしまった中、深夜に事件が起こっていた。翌朝、ラチェットは、自分のコンパートメントで殺害されているのが発見される。遺体には、多くの刺し傷があった。現場に残されていた、焼かれた手紙からは、彼の意外な正体が浮かび上がる。
ポワロは現場を任され、乗客たちの聞き取り調査などを行うが、乗客たちには、犯行時刻と思われる時間には全員にアリバイがあった。
ラチェットを狙っていたという奇妙な男、目撃証言もあるその男はどこに消えてしまったのか。止まった時計の意味とは。様々な謎にポワロが挑む。
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あまりにも有名でありながら、このたび初めて読みましたが、これは面白かったです。
大げさに話しまくるアメリカ人女性、ラチェットを嫌うその秘書、明らかに何かを隠しているイギリス人家庭教師など、関係者たちの多くも印象的で、また基本的にポワロの視点で物語が進むこともあり、読みやすいです。
ミステリーとして面白いのはもちろん、今回面白かったのは、様々な国籍に対するイメージが(登場人物のセリフを通して)語られていることでした。たとえば、あるアメリカ人は、「僕は、イギリス人とは親しくならないことにしています―彼らはがんこですからね―」と言っていますし(113頁)、その他、訳者あとがきにもありますが、アメリカ人への批判のようなセリフもあります。100年近く前の作品ですが、クリスティ自身のイメージなどがうかがえ、興味深かったです。
あらためて、これは面白かったです。良い読書体験でした。
(2023.04.09読了)
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