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M17星雲の光と影

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2007.10.11
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カテゴリ:その他
現在の日本の外交方針は、米国との同盟関係重視と国連中心主義を二本柱としているといわれる。

これは与党自民党の方針であるばかりでなく、程度の差はあれ、野党の民主党もほぼ同じ方向性をもっていると考えていいであろう。

米国との同盟関係重視はわかりやすい。これはあくまでも婉曲表現であって、その意味するところが対米「従属」であることは、中学生でも知っている。ことの当否はさておき、この方針が何を意味しているかはよくわかる。

しかし、もう一方の国連中心主義というのは、必ずしもその中味が明らかではない。

現在、テロ特措法の延長問題で、インド洋上での海上自衛隊の給油活動が国会で論議されている。

民主党は、この活動が国連決議にもとづいていないという理由で給油活動の延長に反対だ。

一方の自民党は、アフガニスタンへの国際治安支援部隊(ISAF)の派遣延長を求める決議案の前文に、米主導の対テロ作戦「不朽の自由」(OEF)への「謝辞」を盛り込もうとアメリカに働きかけた。現在、問題となっている給油活動はOEFの一貫として行われており、これはその活動が国連の承認下にあるという印象を与えようとしたものと思われる。

要するに、国連決議のお墨付きのもとに外交活動、国際的な貢献を行おうというのが、国連中心主義の中味であるらしい。そしてこれは与野党ともにそう考えているようである。現に民主党の小沢党首は、日本もISAFに参加すべきだという趣旨の論文を雑誌に発表している。OEFの一貫としての給油活動に反対し、ISAFへの参加を呼びかける。その根拠はいうまでもなく、国連決議にもとづいているかいないかという一点にあることは明らかである。

「国連中心主義=国連決議にもとづいて国際的な活動を行うこと」。こう理解していいだろうと思う。

しかし、この外交方針は考えてみると、かなり奇妙なものである。

だって、日本国の外交方針を「国連中心主義」に据えるとしたら、そしてそれが国連の決議にもとづく活動を意味するとしたら、国連の決議が行われるまで日本はいったい何にもとづいて外交を行うのだろうか。

国連決議の内容を問わずに、ただ「国連決議に従います」という立場を表明するのは、「日本は主体的な外交努力を放棄します」といっているのと同じではないだろうか。

もしも私が高知県の知事だったとする。就任の際の記者会見で、「知事、今後の県政運営の方針は」と記者に問われたとしよう。

「ああ、その件ですか。それならばうちは「国会中心主義」で行きます。国会で多数決をとった議決に従って県政を運営します」

こう答えたら、どういう反応が返ってくるだろうか。翌日の新聞には、「○○知事、県の主体性を放棄」「自ら無為無策を暴露」という見出しが踊るのではないだろうか。

たとえに若干、不適切な部分を含むが、私のいいたいのは要するにそういうことである。

国連の決議にもとづいて外交を行うというのならば、いったいその決議の前に行われる討議、および議決に何の意味があるのだろう。

私は「国連中心主義」そのものを否定しているのではない。私が批判しているのは、日本におけるその定義づけである。

私が理解する限り、国連中心主義とは、自国の立場を他国に向かって表明する場、そして他国を説得するための場として国連を最大限に活用するということである。

この場合、根本にあるのは日本の国家意思である。それを実現する場が国連である。それならば理解できる。

しかし、現在の国会論議を見る限り、国連中心主義とは国連決議のお墨付きのもとに国際活動を行うというふうにしか思えない。

国連決議にもとづかないからという理由で自衛隊の給油活動に反対する民主党も、その民主党を説得しようとして安保理の決議案の前文にOEFへの謝辞を入れようとした自民党も、頭にあるのは国連決議というお墨付きでしかない。

この場合、国連決議とは錦の御旗であり、水戸黄門の印籠である。

要するに権威の象徴であり、中味はどうでもいいということだ。

「ええい、ひかえい、ひかえい、これが目に入らぬかー、ひかえおろー」

そう言って差し出された印籠のところへすたすたと歩いていって、印籠をぱっかりと開けて中味を検分してしまったのでは定番ドラマは崩壊してしまう。

要するに中味はどうであれ、国連というお上が差し出した印籠に「へへー」といって平身低頭するのが、この国の「国連中心主義」の実質であろう。

それならば、日本には国家意思は存在せず、大勢順応主義のみが存在するということになる。そして、その大勢とは第一に米国であり、第二に国連決議である。

私にはそうとしか思えない。

だとしたら、日本の外交方針は米国との同盟関係重視と国連中心主義などという回りくどい言い方をする必要はない。

日本の外交方針は大勢順応主義である。

この一言で足りる。

しかし、今の日本のこの実状を知ったら、独立自尊を唱えた福沢諭吉翁は彼岸の川べりで無念の涙を流されることであろう。おまけに、この国の高額紙幣の肖像にご自分の尊顔が使われていることを知られたなら、あるいは卒倒されるのではないだろうか。

ひょっとすると、その怨念が元首相の胃腸を捻転させ、体力を奪い、ついには辞任にまで至らしめたのかもしれない。病院での記者会見でわずか数日間の入院であるにもかかわらず、あれほどに憔悴した姿をさらした背景には、そういう事情があったのかもしれない。

それにしても入院先が慶應病院というのはまずかったな。

福沢翁の怨念、おそるべし、というところだろうか。





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Last updated  2007.10.11 22:45:28
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和久希世@ Re:大江健三郎v.s.伊集院光1(03/03) >「彼はこう言いました。「それもそうだ…
kuro@ Re:「チャンドラーのある」人生(08/18) 新しいお話をお待ちしております。
あああ@ Re:大江健三郎v.s.伊集院光2(03/03) 非常に面白かったです。 背筋がぞわぞわし…
クロキ@ Re:大江健三郎v.s.伊集院光2(03/03) 良いお話しをありがとうございます。 泣き…
М17星雲の光と影@ Re[1]:非ジャーナリスト宣言 朝日新聞(02/01) まずしい感想をありがとうございました。 …
映画見直してみると@ Re:大江健三郎v.s.伊集院光1(03/03) 伊集院がトイレでは拳銃を腰にさして準備…
いい話ですね@ Re:大江健三郎v.s.伊集院光1(03/03) 最近たまたま伊丹作品の「マルタイの女」…
山下陽光@ Re:大江健三郎v.s.伊集院光1(03/03) ブログを読んで、 ワクワクがたまらなくな…
ににに@ Re:非ジャーナリスト宣言 朝日新聞(02/01) 文句を言うだけの人っているもんですね ま…
tanabotaturisan@ Re:WILL YOU STILL LOVE ME TOMORROW(07/01) キャロルキングの訳詩ありがとうございま…

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