宜保さんの霊視によると、三人目の悪霊は男性であった。この人は、東北地方のあたりで亡くなったまま供養されていないらしく、母とは血縁関係にあるということであった。この男性の身元を捜すのには大変苦労した。母の従姉にあたる女性が九州に住んでいるので連絡を取ってみると、その女性の父親が、かなり以前に大阪方面へ出稼ぎに行くと家を出たまま行方が分からないとの情報があった。母の伯父に当たる人物である。手掛かりはそれだけであった。母はとりあえず、宜保さんに言われたとおり、その三人の霊に対し、一年間、お茶と線香で供養し、朝夕、白米を供えて仏壇に手を合わせた。
これが母の、宜保さんによる最初の霊視だった。勿論この他にも、家庭内の問題や、母の仕事や病気の悩みを事細かく、僅か三十分という時間内で宜保さんはまとめ上げたのである。霊視の間、母は宜保さんの顔を見る暇もなく、用意したメモ用紙に霊視の内容を書き上げるだけで精一杯だったと語っていた。
宜保さんの霊視は、一つの相談を持ち掛けられると、一方的にベラベラと話し出し、止まることがない。そして、突拍子も無い質問を投げかけても、まるでその質問を待ち受けていたかのように理路整然と話し出すのである。これは宜保さんに霊視を受けた経験のある人は、全く同じ意見だと思う。少し霊視する時間をくださいな、というような空白の時間は存在しないのである。それ故、いかに複雑極まる相談でも、三十分という時間内で納得できる答えが返ってくるのであった。私はこの霊視には、体力の限界を超える何かがあると感じられた。
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