1379232 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

ヒロガルセカイ。

ヒロガルセカイ。

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Profile

柊リンゴ

柊リンゴ

Calendar

2006/04/01
XML
カテゴリ:
帰宅した親子を出迎えたのは、まあるいお顔の女の子。
「お兄ちゃんお帰りなさい。今日はどこのケーキ?」
「ただいま・鞠香。果物のいっぱい乗ったタルトだよ。」
満面の笑顔で真夏にくっつきます。
真夏の妹の、鞠香ちゃん。小学生です。
「御飯食べてからだぞ?」
「おおい鞠香、父さんも帰ったよう。」
「あら。おかえりなさい。ぱぱ。」
真夏にくっついたまま、女の子は見もしません・・。
お兄ちゃんが大好きみたいです。
「鞠香のやつ、照れちゃって。」
お父さんは物事を良い方向に考える人なのです。



翌日の朝、真夏は教室に向かう途中で・素敵な香りに気づきました。
今、すれ違った人でしょうか・・。
あわてて振り返りましたら、男の子が数人歩いていく背中しか
ありません。
あれえ・・真夏はまた指を口に持って行きます。
「とてもいいにおいがした・・。桜餅のような・・。」

「ねえねえ。今日の実習ってなに作るの?」
「今日は餃子よ。お菓子じゃないけど、食べてね真夏。」
真夏には同じクラスに彼女がいます。ちょっと・・
ぽっちゃりしていますが、茶髪でスカート短め。
いわゆる・・いまどきの女の子です。
「桜餅じゃないんだ?」
「へ?なにを言っているの?」
真夏は納得がいかないようです。今日は女子の実習があるので、
そこで桜餅を作るんじゃないのか。
その準備で、匂ってきたんじゃないのか。
あてが外れて浮かない顔をしています。
「真夏って。本当に甘いもの好きね。なのにどうして太らないのかなあ。」
彼女はうらめしそうに真夏を見ました。
「私、真夏と付き合いだしてから、こんなに太ったのよ?」
真夏は聞いていません・・。頭の中は 桜餅 でいっぱいです。
彼女の愚痴を受け止める余裕はありません・・。

お昼になっても真夏は桜餅のことを考えていました。
今日は親父に桜餅を買ってもらおう。
桜餅は こしあん に限る。
うっすらと色づいたつやつやの衣につつまれた あん。
それに布団をかけるようにのった 葉。
塩がきいていて、なかの あん との絶妙なバランス。
なにより・・あの匂いだ。
 彼女がむりやり餃子を食べさせようと真夏の口を狙ったとき。

眼鏡をかけた知らない男の子が、目の前に立っていました。
「 真夏くん。ちょっと・いいかな。」
「だれ?」
眼鏡の奥の切れ長の眼はまっすぐに真夏を見ています。
桜餅の妄想から呼びだされて怪訝そうな顔の真夏でしたが、
すぐに気がつきました。
「あっ。ああ。俺も聞きたいことがある。」
男の子から、桜餅の匂いがしたのです・・。
「で・だれだっけ?」
「て・ゆうか。なんで真夏って・・。下の名前で呼ぶの?」
彼女が固まっています。
「きみには関係ない。  僕は隣のクラスの立秋。真夏くん。
 よろしく。」
「って。なんなの、こいつ。」
じいいいっと真夏を見つめる男の子・立秋くん。
彼女が ひいていますが、微動だにしません。







お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2006/04/01 09:02:36 PM



© Rakuten Group, Inc.