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ヒロガルセカイ。

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柊リンゴ

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2006/04/03
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真夏はロールケーキと立秋の顔を交互に見ました。
「きみがあのタルト屋で、
 ロールケーキを食べたがっていたのを耳にしたんだ。これは
 千載一遇のチャンスだと思ってね。」
得意げに語り続ける立秋。なにが千載一遇でしょうか。
単なるストーカーの告白です・・。

「おまえ・・なんて?あとをつけた?」
真夏は、ようやく語りの中に入りました。
「まあ。そんなことはどうでもいいじゃないか。真夏くん。
 さあ食べたまえ。
 うちが契約している店に朝1番で届けさせたんだ。
 食べやすいように切ってきたのだが・・無粋な入れ物ですまない。
 あいにく使い捨ての容器は持ち合わせていないんだ。」

真ん中に巨峰の断面。オレンジ、いちご、キウイ、グレープフルーツが
周りにクリームとともに散らばり。
真っ白なクリームに包まれたスポンジ生地は、やや黄色かかっています。
新鮮な卵をたっぷりと使用したのでしょう。
「食べていいの?」
「食べたまえ。真夏くん。ああ、フォークが・・ここにないか?」
真夏はとりあえず、食べちゃおう・と思いました。
これをくれた人は、なんだか変わっていますが。

「・・・あああ真夏くん。どうして手づかみなんだい。」
「あ?」
真夏はロールケーキを手でつかんで食べています。
「うまいね。表面にうっすら粉砂糖ふってあるんだ。
 クリームが甘さ控えているから丁度いいじゃん。」
真夏の口元にクリームが付いています。
「きみは・・もっとエレガントに食べれないのかい?真夏くん。
 それじゃあカレーを食べるときと同じじゃないか。
 きみのその細くて長い指がクリームに埋もれているじゃないか。」
立秋はフォークを持ったまま、腕を頭の上まで上げたり下げたり
・・何かの体操にも見えますが、彼はショックのようです。
「ねえ。おまえ名前なんて言ったっけ?」
「立秋だよ。真夏くん。」
真夏は指のクリームを舌でなめると、両手をあわせて
「ごちそうさまでした。立秋。」
と言って ちらっと上目使いに立秋を見ました。
立秋、動けません。
顔を赤くして、しばらく動けません。
どうしてしまったのでしょうか。

「なに。どうしたのお前。」
真夏から漂うクリームの甘い香りに惑わされましたか。
見上げた小悪魔は自分の危機を予測していません。
「あのさあ。聞きたいことがあるんだけど。」
真夏のぴんとはねさせた髪にちょん・と付いたクリーム。
小さい顔。まつげも長いとわかるこの距離。
「なにおまえ。ちかいって。」
ぎっと睨む目。
ようやく警戒し始めました。
「どけって。ああもう・うざいっ。」





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Last updated  2006/04/05 09:19:45 AM



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