細い腕から意外な強い力で拒絶されて、立秋はよろめきました。
かわいい顔をしていても、やっぱり男の子です。 真夏は立ち上がり、お尻をはらって、タッパーを洗い始めました。 スポンジに洗剤をつけて泡立てます。 真夏の腰にぶら提げたチェーンが、がちがちとテーブルに当たります。 少しイラッときているみたいですね。 「あのさあ。おまえ桜餅食っただろう?」 「桜餅とは・・?」 立秋は真夏の問いかけより・真夏の腰パンに注目しています。 腰が細いから、ずり落ちてしまうのだろうか。 ・・言ってもいいのだろうか、なんて考えて。挙動不審です。 「おまえから桜餅の匂いがするんだよ。」 「ああ。桜餅ではなくて、桜だろう。真夏くん。」 真夏は、はあ?と顔を上げました。 「僕の家に桜が咲いているんだ。その香りだろう。」 「そんな匂いかな?こう・・鼻に・塩っけがつくような・・。」 濡れた指を鼻の先につける仕草が、立秋にはたまりません。 「家にくるかい真夏くん。」 思い切ったお誘いをかけました。 「絶対行かねえ。はい・これ。ごちそうさまね。」 あっさり拒絶です。もう餌がないからです。 洗ったタッパーを押し付けて、ぷい・と出て行こうとする 真夏の背中に 「きみは躾のよく行き届いた人だね真夏くん。 そうだね・・いきなり家に誘うなんて性急すぎた。 どうだろうか。 僕とお茶でも。」 真夏は天井から水が滴り落ちて、背中にはりつくような寒気を感じます。 「タッパーを洗ってもらったお礼だと思ってもらっていいんだ。 お茶が飲みたいんだ。真夏くん。」 「外の自販で買って飲めよ。もうーおまえ何か変だ。」 これだけ言われたら、しょげるはず。 しかし青春真っ只中・どうやら人の正しい道を大きくずれて驀進中の この美しい顔の変態さんには、ますますそそられるものが あるご様子です。 「ああ真夏くん。想像どおりだ。きみは僕にふさわしい感性の持ち主だ。」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006/04/05 07:03:09 PM
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