カテゴリ:映画と原作
ある意味、この本はとっても怖い本です。
ネタバレするかもしれません。 人と話をしていて、よく知っているはずの俳優の名前が出て来ないってこと、ありませんか? 顔は思い出せるのに、名前がどうしても出て来ない。 ほら、あの人。あれに出ていたでしょ。 あの番組に出ていた、その番組名がまた、思い出せない。 それがこの本の主人公(49歳)が、若年性アルツハイマーにかかる前の不吉な徴候でした。 病院で医師から簡単な検査を受けるシーンもあります。 机の上に並べた、腕時計やハンカチ、ペンなどの品物を、 紙で隠して「さあ。机の上に何がありましたか?」 アトランダムな数字を4つ続けて言ってから、「今の数字を逆に並べてください」 私はそれにサッと答える自信がありません。 特に数字の方は、出来ないと思います。 読者が、自分をちょっと疑いたくなるような気分にさせておいて、 主人公の症状は、どんどん悪くなっていきます。 記憶が抜けていくだけではありません。 頭痛、めまい、不安感、情動失禁、味覚などの感覚も失い、 会社も退職してしまう49歳の男性を、一生懸命支えようとする、妻。 男性の周囲の人々もいい人ばっかりだっただけに、 陶芸教室の教師の小さな小さな裏切りが、とても悲しかった。 映画は、原作にかなり忠実に作られています。 誠実に作ったという印象があって、非常にいい映画でした。 ただ、映画は視覚に訴えるものですから、原作の最後の衝撃と悲しさが伝わらないのがとても残念でした。 原作では、とうとう彼が妻すら分からなくなったということが、 最後の最後の数行まで伏せられていくんです。 映画では、妻がそこにいるって見えているわけですから、重みが違うんですよね。 文章の勝ち! そういう風に感じました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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