カテゴリ:小説
書いてから読み返してみたら、どうもネタばれしてるみたい。
でも、他に書きようがなかったので、このままアップします。 これからの人は読まないでくださいね。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ この本はとても評判のいい本ですね。 かつてチェリストをめざして音楽高校に通っていた、今は大人になった男性が、高校時代を追想して書いているという内容です。 音楽にかける情熱や、初恋、その衝撃的な結末、若さゆえに気持ちのやり場がなくて、教師の人生まで狂わせた苦いエピソード。 書評を読むと、高校時代を思い出して、切なさに泣いたというのが多かったようです。 私もそんな感じを期待しながら読んだのですが、音楽高校という設定があまりにも普通高校とかけ離れていて、そこまで感情移入することなく読みました。 普通の高校生って、一応進学クラスだったりしても、とりあえず大学に行くけれど具体的な進路ははっきり決めてないっていう人がほとんどじゃなかったですか? もちろん私は、それでいい。進路は大学やその後の人生でゆっくり決めても、決して遅すぎるということはないし、かえってあまり早い時期に決めてしまうのは、よくないんじゃないかという気もしていました。 けれど、音楽高校は違うんですね。 この本を読んで初めて知りましたけど、ほとんど普通の学科の授業はないみたいです。 それに、朝練だの放課後のレッスンもあるし、個人的に習っているレッスンもあるし、クラブ活動もないようだし、学科の勉強をする時間はまったくと言っていいくらいないみたいです。 つまり、たいていの生徒は音楽家、演奏家になることをめざしていて、それはもう、とっくに決まっていることなんです。 ただ、生徒の100%が才能があるとは思えないですから、いろんな形で進路を変えていくことになるんでしょうけれど、少なくとも高校時代には、音楽以外の大学へ進むことは信じられない、まったく思考の外にある選択肢のようです。 そういう、ある意味過酷な状況の中で、主人公のサトルは、自分の音楽の才能を客観的に見ることができた早熟な少年でした。 音楽の世界をお金が儲かるかどうかで計る人とか、演奏家集団のゴシップ好きを音楽通と間違えている人とか、そういう人たちも芸術家の卵と呼ばれる世界です。 そんな中で、真摯な芸術家でありたいと願った主人公は、結局、音楽が芸術の邪魔をするという、悲しい真実に到達してしまうのです。 音楽家一家に生まれ、自分も音楽家になることを信じて育った10代の少年にとっては、かなり残酷な経験です。 その主人公に、元倫理社会の教師が教えてくれた「船に乗れ!」の言葉。 いったい何の関係があるんだろうと、ずっと気にしながら読んでいたこのタイトルの言葉が、重みを持って私たちに迫ってきます。 音楽用語や作曲家の名前、曲名など、たくさん出てきます。 でも、音楽について何も知らない人でも、十分楽しんで読むことができます。もちろん詳しい人は、その何倍も興味深いことでしょう。私はどっちかというと、絵より音楽が好き。という程度の音楽好きですが、この曲を聴いてみたいなあ・・・って何度も思いました。 船に乗れ!(1) 船に乗れ!(2) 船に乗れ!(3) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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