テーマ:Jazz(1961)
カテゴリ:音楽:ライブ
ここで、ステージ特別企画。「渡辺香津美に質問しよう」のコーナー。 ところが会場がシーンと静まりかえってしまった。日本のオーディエンスははずかしがりやなんだよなぁ。 渡辺さんは、洗足学園で何か音楽の講義を教えているそうだが、うるさい教室の学生を静かにさせる方法は「何か質問はありませんか?」と問うことだという。 そんな中、2名ほどいい質問をしてくれるひとがいた。 最初の質問は、「外国のミュージシャンと演奏して印象的だったり影響されたりした人は?」 香津美さんの答えは、 「1980年代のジャコ・パストリアス」マイルス・バンドにいたマイク・スターンが日本ににったらKATSUMIがいるぞ、と紹介してくれて、ジャコとツアーしたらしい」 ジャコは、はちゃめちゃ人で、譜面もないのでジャコの演奏を聴きながら曲を覚えたりしたらしいが、面白かったのは、ジャコが 「今日は、ジミヘンのように鬼のようにギターを弾いてくれ」といたかとおもうと、翌日は 「今日は、スペースを重視した演奏をしてくれ」と言ったりと毎回違うこと。 日本のミュージシャンの場合は、方向性をひとつに決めてバンド・サウンドをだんだんかためていこうとするがジャコの場合は、変幻自在。非常にフレキシブルで面白かったそうだ。 もうひとり、香津美さんがあげたのが、プロデューサー兼ビブラフォン奏者のマイク・マイニエリ。ぼくも大好きなアーティストだが、 マイク・マイニエリにはじめてプロデュースしてもらうために、単身NYに乗り込んで「てんぱっていた」渡辺香津美さんに対して、彼は、「KATSUMI、もっとナチュラルにやればいいんだよ」と言った。 しかし、ナチュラルにっていったって、どうやっていいかわからなかった香津美さんに対し、「地球上にはたくさんギタリストがいるけれども、君はボクが好きなギタリストのひとりなんだよ。自分自身のあるがままでいいんだ」と言ってくれたそうだ。 このとき、プロデューサーというのはミュージシャンに勇気を与えることも重要な役割のひとつなんだなァ、と思ったそうだ。 どちらも貴重なエピソード。質問コーナーのおかげだ。 質問その2(楽器と奏法の使い分けについて)は省略。内緒(笑)ちょっとだけ書くと、基本的に、ギターの個性・音色を生かす演奏テクニックをつかうが、そこで得たテクニックを違うタイプのギターに使ってみると、これがまた面白い効果・表現が出来たりするので、いつもグルグルと新しい奏法や音色・効果をギターと分かち合いながら作っていく、とのこと。 「ギターと分かち合う」なんて素晴しい言葉だなァ。ギターを本当に愛していないとこんな言葉は簡単には出てこないと思う。 さて、質問コーナーもおわって、あの曲は弾いてくれるのかなァ。 残っているギターはアコースティック・ギターあと1本だし、あのギターで弾くのかなァ。でも違うかなァ、 と思っていると、2本目のアコースティック・ギターを手に取った香津美。 村治佳織との共演で身につけたそうだけれども(日記参照)、クラシック奏者のように、左足を踏み台に乗せて、ギターを少し角度を高くして演奏するかまえをみせた。 オオベーションやジャズ・ギターは、ギターベルトをつけて右足に乗せて弾いていたが、これは最近、彼が取得したギターの持ち方。そこまで気が付いた人がいるかどうか知らないけれども。 香津美は「ギターをめざすひとで、この曲を聴いたことないひと、知らない人は、世界的モグリです。題名はあえて言いません」といった。 ミニ・ライブ最後の曲は、弾き始めてすぐ分かりました。そうあのロック史上燦然と輝く超名曲 レッド・ツエェッペリンの 「Stairway to Heaven(天国への階段)」 だったのです! 有名なイントロを弾いたあと、やっぱりひとりギター1本で弾くのは無理らしく、MIDIで録音したもの、または自分でライブ用に演奏したギター・パートにあわせて、有名なメロディを弾き始めました。 圧巻だったのは、ツエッペリンのオリジナルでは、ギター・ソロからバンド・サウンドに展開してエネルギーが爆発するパートを、 アコースティック・ギターをぎんぎんに弾いて、それこをピックや指をフルに使い、チョーキングもプリングもハンマリングも、カッティングも、まさにエレキギターのテクニックをがんがんアコースティック・・ギターで使いながら、最高にカッコいい演奏をしてくれたことです!! ぼくが、渡辺香津美が大好きな理由のひとつ、それもかなり大きな理由なのは、彼の音楽的懐の広さ、音楽性の幅の広さ、ジャズやロックやクラシックの壁を微塵もかんじさせないクロスオーバーな音楽性にあるのです。 彼のギター・ヒーローが、例えば、ジム・ホールやウェス・モンゴメリーだけだったら、多分、僕は渡辺香津美を好きにならなかったでしょう。 彼の音楽的バックボーンには、やっぱり1960年代おわりから1970年代はじめのロック、ハードロックが脈々と生きている。 ジミー・ペイジだけではなく、彼がジェフ・ベックに言及する時もあります。 そういったバックボーンを背景に、ジャズの影響もきゅうしゅうしながら音楽をやっていることによって獲得した音楽的多様性や柔軟さ、そこが大好きなのです。 ジャズは、音楽として多くの人に影響を与えました。今でも与え続けているでしょう。 しかし、ビートルズやレッド・ツエッペリン、ジェフ・ベックといった1960年代1970年代のロックは、音楽的にだけではなく、 サブ・カルチャーとして、新しい価値観やライフスタイルの表現として、世界中の多くの人に決定的な影響を与えた。 そういった時代の空気をいっぱり吸って、憧れて、コピーしながら練習して天才少年と言われて育ってきた彼の音楽観、世界観、宇宙観、 それがないアーティストは、正直言ってクソみたいなものなのです。少なくともボクにとっては。ウクレレが大好きなのに、なかなか全曲満足できるウクレレCDを出してくれるひとがいない、というボクの欲求不満は、こんなところにあるのです。 大きな拍手でステージをおりた渡辺香津美。最後まで、この名曲の名演奏の曲名を言いませんでした。ギターを志すからには、こういう名曲は最低限知っていて欲しい、そんな彼のメッセージを感じました。 アンコールにこたえて再びステージにあらわれた香津美。今度は、こんなふうにユーモラスに言いました。 「日本で小学校教育を受けた人で、知らない人はいない曲」 アルバムでもエンディングに演奏されている 「月の砂漠」です。 アドリブが入っていたようで、CDの演奏よりよかったのではないかと思いました。 最後に、希望者へのサイン会です。 ぼくは自分の番が回ってくると、アルバム・ジャケットにサインをもらいながら言いました。 「Stairway to Heaven、シビレました! ぼくは、ウクレレを弾いていてブログを書いているのですが、最近、香津美さんの新しいCDについて書きました。よかったら、あとで読んでみて下さい、といって、先日のブログのプリントアウトをクリアファイルに入れて渡しました」 「どうもありがとう。読んでみます。」といって手をさし出だしてくれた彼と握手をしました。 前にも握手をしたことがありますが、記憶と違って分厚いけれどもこぶりな手は、柔らかく暖かくボクの手を握っていました。 やっぱ、素晴しいなァ。世界で一番好きなギタリストかもしれない。 渡辺香津美。CD「ギター・ルネッサンスIII [翼]」。超オススメです♪ ギター・ルネッサンスII<夢> 渡辺香津美/ギター・ルネッサンスIII<翼> 関連日記 心に沁みた渡辺香津美の「Over the Rainbow」 村治佳織 meets 渡辺香津美♪ その1 村治佳織 meets 渡辺香津美♪ その2 ウクレレ・エルビス♪楽しいよ!! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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