私:著者は、一般の予測と同じで中国はこれから発展するだろうと予測している。
理由は、日本の後を30年遅れて追っているということ、賃金の低さ、2030年まで続く人口増加の3つをあげているね。
A氏:生産年齢人口の増加効果は「人口ボーナス」だね。
私:しかし、北京オリンピックが終わるとすでに始まっている不動産バブルが崩壊するので、長期的には明るいが、短期的には問題があるとしているね。
この不動産バブル崩壊で、アメリカがどう出るかが問題となろうね。
この本ではアメリカは攻勢に出るとしているね。
しかし、この本が出てからになるが、サブプライムローン問題で、アメリカはすでに中国からカネの支援を受けている。
A氏:中国の政府系ファンドは、サブプライムローン問題でおかしくなったアメリカのモルガン・スタンレーに50億ドルを注入しているね。
私:一方、中国はアメリカに対する戦略として、ドル基軸通貨体制の崩壊、中東、ロシア、カスピ海の石油・天然ガスの確保、経済力・軍事力の強化を行うという。
中東の石油問題で、すでに中国はイランに接近している。
親米的なクウェート、さらにはサウジアラビアまでも接近している。
A氏:06年4月胡錦濤主席はサウジアラビアを訪問しているね。
ところで、この本の題名の中国・ロシア同盟とはどういうことなの?
私:イラン問題を見ると、中国は石油供給でイランに接近。
ロシアはイランに武器を輸出し、原発利権にも関与している。
また、中ロはイラクの石油利権をアメリカに奪われた苦い経験もあるね。
一方で、ロシアは中国向けにガスパイプラインを建設する。
もう一つ、上海協力機構(SCD)というのがあるね。
A氏:ウィキペディアで検索すると01年6月に創設。
加盟国は中国・ロシア・中央アジア4国(カザフスタン・ウズベキスタン・キルギス・タジキスタン)。
ソ連の崩壊で国家統制の及ばない武装勢力から中央アジアの国境を共同で管理したい中国の思惑があったと見られる。
国防上の要求もあり発足させた軍事同盟的な側面も持つ。
またこれらの国に一定の影響力を持つことで、ロシアと対等な立場を保って、長期的な安全保障を確立したいものと見られる。
また、エネルギー問題に関しても、消費国である中華人民共和国としては、石油・天然ガス産出国である中央アジアの関係を強化したいものと考えられるとあるね。
私:05年7月にはイラン、インド、パキスタンが準加盟国として参加承認されているね。
06年6月にはSCD創設5周年宣言で「政治体制の違いを内政干渉の口実にしてはならない、中央アジア各国政府の安定維持の努力を支持する」とある。
A氏:なるほど、言い換えれば「中国とロシアは、中央アジアの独裁者たちをアメリカ主導で行われた、バラ革命、オレンジ革命、チューリップ革命のようなカラー革命から守る」という宣言だね。
ウィキペディアによると、イラン、インド、パキスタンの正式加盟によって、SCOは中国の国境対策の機構から、中国・ロシア・インドといったユーラシアの潜在的大国の連合体に発展することになり、アメリカに対抗しうる非米同盟(反米ではないことに注意、また当事者がそう断言しているわけではなく、同盟の強制力はない)として成長することは、アフリカや南アメリカの発展途上国・資源国から歓迎され、また、印パ両国が加盟することで、中印パ3国間の対立の解消も期待されているとあるね。
興味あることは、アフガニスタンはカルザイ政権が半ば「アメリカの傀儡」であるとされ、加盟を拒否されていることだね。
私:中国はドル体制への強力なカードとして世界一の外貨準備と米国債がある。
この本が出てから、サブプライムローン問題が出て中国の政府系ファンドが支援に動いているが、中国にとってはアメリカ経済が衰退すると、現在、アメリカ輸出に頼っている経済が破綻するからだね。
しかし、アメリカの力が衰退しつつあることは事実だね。
一方、中国はSCOがあるね。
全体的にみると中国有利ということか。
しかし、「老いてゆくアジア・繁栄の構図が変わるとき」にもある通り、中国も老齢化社会がやってくる悩みもあるが、この本ではふれていないね。
その他、日中戦争の可能性についても述べているが、国際政治の大きな流れをざっと見るには分かりやすい本だね。